「自由の国」を感じたBBQ

高波 文雄 キャプテンスタッグ代表取締役会長

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 日射しに夏の気配が満ちる頃、大きな川の傍を通ると、炭火の薫りにハッとすることがあります。きっと誰かが、河川敷でバーベキュー(BBQ)を楽しんでいるのでしょう。BBQは日本のレジャーとして、今ではすっかり定着しました。私がBBQと出会った昭和の頃に比べれば隔世の感があります。

高波文雄氏。手に持っているのは、キャプテンスタッグのマスコット『鹿番長』のぬいぐるみ ©文藝春秋

 私が初めてBBQと出会ったのは1974年、第一次オイルショックの最中に市場調査の目的でロサンゼルスを訪れたときのことでした。あの頃の私は、兄が創業した生活雑貨メーカーのパール金属(新潟県三条市)で商品開発を担当していました。

 当時、私を含めたほとんどの日本人がBBQという言葉すら知りませんでしたが、公園や庭でBBQに興じるアメリカ人を目の当たりにしたとき、「これを日本でもやったら絶対に楽しいだろう」と確信しました。屋外で肉を焼き、立ったまま食事と会話を楽しむ光景に「自由の国」の風情を感じたのです。

 帰国してすぐに準備を進め、76年にはパール金属社内にアウトドア部門を立ち上げ、第1号商品として国産初の本格BBQコンロ『ジャンボバーベキューコンロA型』を発売しました。こうした経緯でスタートしたアウトドア用品ブランド「キャプテンスタッグ」は、日本のBBQ文化とともに成長してきました。今年は設立50周年の節目です。

 日本にBBQが存在しなかった時代の商品開発は大変でした。コンロを試作するために焼き網を探しても、当時は七輪に合わせた小さなものしか売られていない。試作段階では、仕方なく玄関先で靴の泥落としに使う玄関マットの金網を利用しました。ちなみにこの金網の大きさが60センチ×40センチだったので、このサイズで最初のBBQコンロを開発しました。いまだに、当社のBBQコンロの売れ筋はこのサイズ。日本人の家族が囲むにはちょうどいいサイズなのでしょう。

 面白い偶然だなあと思いましたが、当社の商品開発の流儀は、まさに日本人のライフスタイルに寄り添うことです。

 たとえば、持ち運びやすさは、第1号商品から重視してきました。日本の住宅の敷地はアメリカよりも狭いので、BBQを楽しむなら河川敷やキャンプ場に出かけなくてはならないからです。また、持ち運びやすくするため折り畳み構造を採用したことでコンパクトに片付けやすく、日本の住宅事情に合った商品になりました。

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source : 文藝春秋 2026年8月号

genre : ライフ 商品 ライフスタイル