日本初の女性総理の研究第1回は、最も近い人物の証言である──。
「私が取材を受けるのはこれで最後です」。夫婦関係、再婚と改姓、介護問題、すべてを語った
【本記事のトピック】
高市「ワーキングケアラー」説の真相
公邸の防音室でドラムを叩く妻
都会の生意気なカンカン娘
高市の弟がつないだ縁
独り身女性のプレッシャー
「彼女は政治と結婚したんやな」
グアム旅行はSP同伴で
「おめでとう!」「あ〜、疲れたわ!」
高市は“赤ペン先生”
しぶとい壁バスター
〈河野さん 高市拓です〉
高市早苗の夫・山本拓から、ショートメールが届いたのは、1月24日の午後10時24分のことだった。都内の飲食店で記者仲間と情報交換をしていた私は驚きつつも、すぐに〈明日、お電話させていただけますと幸いです〉と返信をした。
筆者は政治取材を専門とする34歳のジャーナリストである。ちょうど高市が電撃的な衆院解散に踏み切り、選挙の公示日まであと3日というタイミングだった。昨年12月に公開された高市の閣僚資産報告書に、拓の保有株の記載漏れがあることを発見し、高市事務所に質問状を送っていた。ただ、まさか拓本人から直接の連絡があるとは思ってもみなかった。
日本初の女性総理の誕生により、パートナーである拓もまた日本初の“ファースト・ジェントルマン”になった。ただ、73歳の拓は昨年脳梗塞を発症して療養中とされ、メディアにはほとんど姿を現さない。昨年10月に報道陣の合同電話インタビューに応じたほか、11月の旭日大綬章受章時に地元紙に登場した程度。いわば「消えたファースト・ジェントルマン」なのだ。
翌日、午前10時45分に電話をかけてみると、私の耳に飛び込んできたのは、ややしわがれながらも、思いのほか力強く、朗らかな声だった。
「質問状をもらったけども、今、手が不自由なもんで、(文字を書くのが難しいため)電話で(回答を)失礼するけどね。口だけは相変わらず達者だよ(笑)」
「あなたフリーランスやろ?」
筆者が質問状に書いた保有株の件は、「勘違いしていた。俺のほうから修正を出す」という話ですぐに終わった。その後も話題は絶えず、拓との電話は気がつくと1時間を超えた。公邸での暮らしぶりも率直に語った。
「建物の出入りが厳しくて、牢屋みたいやな。週1回、掃除をしてくれる人がきてくれるけど、料理人はいないから、食事は自分でやらないといけない。笑い話やけど、ピザを頼む時でも、配達員の名前を事前に聞いておかないといけなかったりな(笑)」
その言葉の端々からは、妻への温かい眼差しが伝わってきた。
「彼女の真面目さと、あの素直さと、あの純粋さ。それは生活の中で分かるからね。裏表ないからね、意外と。俺はやっぱりちゃんと応援したいっていう気持ちは昔からずっとあった。だから一緒になったところもあるんで……。やっぱな、女性やから、永田町では、なんだかんだ言うやつもいっぱいおる。男の嫉妬の方が強いからさ。だから、そこらのおっさんに対するボディガード役にならんと。そう、いつも思っていましたけどね」
拓は明るく、ざっくばらんな性格。相性のよさを感じてくれたのか、その後も連絡を重ねているうちに、「あなたは、なんだか信用できそうな人だから電話しているんだ」と言うこともあった。
筆者は次第に、日本初のファースト・ジェントルマンの肉声を歴史的記録として残したいと思い始めた。高支持率を背景に、2月の衆院選で自民党を歴史的大勝に導いた女性初の総理。その夫だけが知っている総理の「実像」があるはずだ。

無論、拓が二つ返事で取材に応じたわけではない。だが、最終的には彼流の冗談を交え、「あなたフリーランスやろ? 収入アップには協力しますよ(笑)」と取材を了承した。さらに「病気のこともいつまでも黙っているわけにはいかない」と言う。一方で、リハビリ中の身であることから「俺はマスコミには出ない“ステルス旦那”や。こうした形の取材を受けるのはこれが最後。今後も他の人の取材に応じるつもりはない」とも語った。拓はセキュリティの厳しい公邸に住んでいる上、療養中であることも考慮し、取材は合計11回、累計すると約20時間の電話インタビューで行った。

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高市「ワーキングケアラー」説の真相
国会議事堂から坂を下るとガラス張りの首相官邸の脇に、古びた洋館がそびえ立つ。昭和初期の建物を改修した首相公邸である。高市夫妻は昨年12月末に、衆院議員宿舎からこの場所に入居した。
ヴェールに包まれた公邸での夫婦生活を、噂好きな永田町の住人たちは様々に取り沙汰してきた。「総理は公邸に戻ると、夫の介護にかかりっきり」、「入浴の介助までしている」。高市に近い自民党幹部ですら、そんな認識をもっともらしく周囲に語る。
今年1月には毎日新聞が、高市が周囲に拓の介護を「ワンオペでしている」と漏らしているとした上で、高市が仕事を続けながら介護に従事する「ワーキングケアラー」の可能性があると報道。「週刊新潮」も同時期、高市と拓が言い争い、「離婚危機になった」と報じた。
自身を巡る様々な声について、拓は「困ったこっちゃな……」とため息を漏らす。
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