高市外交は戦中の人気宰相の失敗に学べるか
イラン攻撃をはじめ、トランプ米大統領の行動に国際社会が振り回されている。混迷する国際情勢の中で、日本外交の基軸・日米同盟も大きな岐路に立つ。就任から半年が経つ今、高市早苗首相の外交をどう評価すべきなのか。そして、これから日本外交はどこに向かうべきなのか。安倍政権下で設置された安保法制懇談会の有識者委員で、国際政治が専門の京都大学大学院教授の中西寛氏に聞いた。
2026年は、アメリカがベネズエラで軍事作戦を展開し、マドゥロ大統領夫妻を拘束するという驚きのニュースで幕を開けました。2月末には、イランへの大規模攻撃が行われ、最高指導者ハメネイ師が殺害された。世界を驚愕させた二つの出来事が示すのは、アメリカが中心となって作り上げられた第二次世界大戦後の国際秩序が、加速的に解体過程に入ったということです。

高市早苗政権の外交政策に触れる前に、まずは前提となる国際情勢の現状について整理しておきましょう。
いま起きている大きな変化は、2020年に始まった新型コロナウイルスの流行が契機だったと私は考えています。世界規模で広がるウイルスの脅威を目の当たりにする中、世界の分断は広がり、サイバー空間が一気に日常に浸透した。その結果、世界の人々の価値観は変化し、それまで忌避されていた戦争や武力行使が、決定的に恐れられるものではなくなったのです。
それに伴い、国際秩序も大きく変容し始めました。22年にはロシアによるウクライナ侵攻が、23年にはパレスチナのガザ地区を実効支配する武装組織ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃が勃発しました。世界全体で戦争に対する許容度が上がる“戦争慣れ”とも言うべき事態が広がり、紛争の世界化が進み始めたのです。
問題なのは、現時点では各地で散発的に起こっている紛争が、次第にひとつひとつ結びついて、いずれ一つの「大きな戦争」に発展する可能性があることです。
イラン戦争でも注視すべきはパキスタンが停戦交渉の仲介役となっている点です。アメリカともイランとも関係が良好な国として仲介に適役とされています。

ただ、パキスタンはサウジアラビアとも相互防衛協定を結び、中東への関与を深めています。中東諸国は、イスラエルの強大化に対抗するために核保有国であるパキスタンを引き入れてバランスを取ろうと狙っています。他方でパキスタンは中国と良好な関係がある一方でインドと伝統的に対立しています。そのインドはイスラエルと親密な関係を構築している。
つまり、南アジアと中東情勢の関係が深化し、経済的には東アジア情勢とも結びつく。そこにロシア・ウクライナ情勢が絡んできた場合、いよいよ世界戦争が現実味を帯びてくるのです。
日本人の「没落感覚」と高市人気
この危機の時代に日本外交のかじ取りを担うことになったのが、高市早苗首相です。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2026年6月号

