発明家、実業家、政治活動家……幾つもの顔を持ち、選挙への出馬は実に17回。タレントとしてお茶の間でも親しまれてきたドクター・中松(本名=中松義郎、1928〜)。次男でシンガーソングライターの中松義成氏(52)が、“偉大なる父の伝説”を綴る。
私は父を尊敬しています。
エジソンの発明件数は1093件。父の発明はこれを大きく超える3946件です。父は、発明は「一スジ、二ピカ、三イキ」から生まれると言っています。「スジ」とは理論のこと。アイデアの基には、綿密な研究の積み重ねがあるのです。「ピカ」は、従来の発想とは違うひらめき。「イキ」は世の中で生きること、実用性を指します。発明は、単純な思い付きやインスピレーションから偶然生まれるものではないのです。
しかし父の名刺に、「発明家」とは書いてありません。なぜなら、東京大学やハーバード大学、MITなどの名門大学で登壇するほか、シンガーソングライターであり、多数の本を書いている著述家でもあるなど、活動が多岐にわたるからです。

父が日常生活で大切にしている信条は「人の悪口を言うな」。これは家族に対しても推奨しています。
感謝しているのは、自宅のそばにある私立の幼稚園と小学校を選んで、通学に危なくないように気を遣ってくれたこと。反対に子どものころ大変だったのは、食事のときです。父は研究のためにすべての献立を記録するので、三脚を立てたり八ミリを回したりしている間、ずっと我慢して待っていると、料理が冷めてしまうのです。
小学生のときは、学科ごとに4人の家庭教師をつけてくれました。おかげで私は学年で成績が1位となり、卒業式で答辞を述べました。
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