プロ野球の監督だった夫・野村克也の指導方針に口を挟むなど物議を醸す一方、タレントとして「サッチー」の愛称で親しまれた野村沙知代(1932〜2017)。南海時代から交流のある、野球評論家の江本孟紀氏が知る彼女の素顔とは。
初めて会ったのは、私が南海にいた1975年だと思います。ホテルの廊下ですれ違ったらしいのですが、その女性が、のちに「サッチー」と呼ばれる野村沙知代さんでした。

当時、選手兼任監督のノムさん(野村克也)と交際していたサッチーは多分、私がその時に挨拶をしなかったことがお気に召さなかったのでしょう。しかも、どうやら長髪が嫌いだったらしく、ノムさんからも「髪を切れ」と言われた。そこで仕方なく切ることになり、シャレで“断髪式”を行ったのです。
この頃からどうもノムさんに、あれこれ苦情を言うようになったらしい――そんな噂が流れており、チームの雰囲気が悪くなっていた。そこで私と藤原満、西岡三四郎の3人で「チームが少し動揺しているので気を付けたほうがいいですよ」と、監督に進言したことがありました。
翌76年、私は阪神へトレードに出されましたが、実際のところ理由はわかりません。77年にノムさんが「野球を取るか、女を取るか」と球団に迫られ、サッチーを選び南海を退団したくらいですから、彼女の影響力は大きかったのでしょう。
ノムさんがヤクルトの監督時代でした。私は彼女と大揉めしました。
テレビ番組でノムさんにインタビューをしていた時のこと。ホテルの一室でまだ収録中なのに、サッチーがいきなり入ってきて私の目の前に座り、睨みつけてきた。きっと長い時間、待たされていることに苛立っていたんでしょう。「あんたはね、解説でうちの旦那の悪口ばかり」と吹っ掛けてきた。あまりにもしつこいもんだから、私もつい「うるせぇ! いちいち主人の仕事場にまで来てがたがた言うんじゃない!」と怒鳴り返した。場は騒然となり、さすがのノムさんもたじたじでした。
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