■短期集中連載 がんで生まれ変わった10人
・大腸がん「打てば忘れる。でも、消せない不安がある」 原口文仁(元阪神タイガース)
・乳がん「がん家系だからこそ『標準治療』のメッセージ」 梅宮アンナ(タレント)
・胃・食道がん「保釈直後の闘病が『あきらめない』の原点」 鈴木宗男(参議院議員)
・膀胱がん「病と向き合って竹下登の気持ちが分かった」 御厨貴(政治学者)
・大腸・腎臓がん「二度のがん、妻のがん死を経験した専門医の発見」 垣添忠生(日本対がん協会会長)
「ぜひ、垣添先生のお話を聞かれてみるといいですよ」
垣添忠生さん(84)は日本のがん医療や対策に深く携わってきた医師である。1941年生まれ、泌尿器科医として膀胱がんの基礎研究・臨床の両面に貢献し、2002年からは国立がんセンターの総長を務めた。今も日本対がん協会の会長として、がん検診やがん予防、グリーフケアの普及に力を注いでいる人だ。
その彼に会いに行くことにしたのは、前出のがん研有明病院の清水研さんに「ぜひ、垣添先生のお話を聞かれてみるといいですよ」と勧められたからだった。なぜなら、垣添さんは日本のがん対策を牽引した医師としてのキャリアと同時に、自身も二度のがんを経験し、最愛の妻をがんで亡くした遺族でもあるからだ。

医師の立場からがんという病気に向き合う中で、垣添さんはどのような考えを持つに至ったのだろうか。東京・築地にある日本対がん協会の事務所を訪れると、垣添さんはそれが昨日のことであるかのように自身の経験を話した。
「妻が亡くなったのは2007年12月31日、夕方の6時15分のことでした」
妻の昭子さんは過去に肺の腺がんと甲状腺がんを経験し、いずれも手術による治療を行った。そのなかで、2人には「がんは治るものだ」という確かな実感が生まれ、2006年の春に検診で三度目のがんが見つかったときも、彼女の側は「あなたがまた治してくれるんでしょう?」と楽観的だったという。
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