元サンケイスポーツ記者として、故・野村克也氏、王貞治氏と20年超の交流がある飯田絵美氏(55)が、ライバルたちの長嶋茂雄への想いを語る。
王さんと野村さんの共通点の一つが「打倒・長嶋」。それをハッキリと口にする野村さんと、心の内に秘める王さんの違いはありますが、2人が長嶋さんをライバルとして意識していたことは間違いありません。
王さんは現役時代「長嶋さんにライバル心はない」と公言していました。しかし後に自伝で「どんなにいい成績をあげても、どんなに打っても、人気という点ではどうしても長島(ママ)さんを抜けなかったのだ」と、率直な想いを綴っています。
カリスマ性への憧れや複雑な感情はホークスの監督に就任してようやく口にできるようになったのですが、尊敬と羨望が混ざった想いは、言葉の端々に表れていました。

王さんがホークスの監督当時、福岡の小さな居酒屋に連れていってくれたことがありました。一流店しか行かないと思っていた私がびっくりしていると、「僕はラーメン屋のせがれだよ。こういう肩をくっつけて、椅子を寄せ合って食べるような店が好きなんだよな。ミスターは、こういうところは来られないだろうなあ」と、ちょっと自慢げに、どこか嬉しそうに言うのです。
名監督として揺るぎない存在感を築いた王さんは、人気では勝てなかった長嶋さんへのやるせなさを感じながらも、スーパースターであり続ける長嶋さんの凄みや、人知れぬ苦労を知っていたのだと思います。
一方、対抗心を隠さなかったのが野村さんです。六大学野球のスターとして巨人に入った長嶋さんに対して、同学年の野村さんは高卒で南海にテスト生で入りました。野村さんが大記録を打ち立てても、翌日の朝刊一面は決まって長嶋さん。野村さんは「所詮、パ・リーグの扱いなんてそんなもん」と、30年以上前の出来事を悔しそうに吐き捨てました。
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