建築から見えた日本のものづくりの課題

これからの製造業はどうなるのか

永山 祐子 建築家
ビジネス 社会

いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。

 建築家として、自らが描くデザインの極限を追求する中で、国内外の様々な「ものづくり」の現場と向き合う機会があります。

 そこで感じるのは、このままでは、日本のものづくりは危ないという危機感と、でもそれを乗り越えるだけの可能性を持っているという、2つの相反する感情です。日本のものづくりの技術は確かにすごい。ただ、実際に建築の世界にいるとその固定観念は、近年、大きく揺らいでいるのを実感します。

永山祐子氏 ©文藝春秋

 2004年に私がルイ・ヴィトン大丸京都店のファサードを手掛けた際には、ガラスの建材に関しては、日本国内の会社と相談して必要なものを作ってもらうことができました。当時は、「日本であれば、大抵のものを揃えることができる」という安心感があった。

 しかし、近年、状況は大きく変わってきました。たとえば、2023年に開業した東急歌舞伎町タワー。建物の足元のアルミキャストは長野にある会社にお願いしたのですが、外装に使ったセラミックプリントは日本で実施するのを断念しました。限られた期間で必要なサイズの生産ができなかったり、地上48階建て(225メートル)の建物に必要な量を揃えることが難しかった。交渉をしても、ガラスが大きいとか加工が特殊になると「(会社の)規定があるから」と断られてしまうこともありました。

 そうなると必然的に海外のメーカーを頼らざるを得ない。実際に今や特殊なガラスの製造技術や生産キャパシティにおいては、海外メーカーが日本を凌駕する分野も少なくありません。

 現在、進めている建築の現場でも海外の会社に依頼をしています。輸送コストや円安などの諸要素を考えると本来であれば日本で頼みたい。しかし、曲がったガラスの間に、特殊な材料を入れるという複雑な作業を引き受けてくれるところはなかなか見つからないのです。

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source : ノンフィクション出版 2026年の論点

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