ラブソングを書くのが苦手。くだらないって思ってました

第10回 ダイジェスト版

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経済学者・成田悠輔氏がゲストと「聞かれちゃいけない話」をする対談連載。第10回目のゲストは、椎名林檎さんです。

※この対談のノーカット版は後日、「文藝春秋PLUS」で公開予定です

しいな りんご 作曲家/演出家

1978年生まれ。福岡市出身。1998年にシングル「幸福論」でデビュー。バンド『東京事変』も率いる。自作自演はもとより、他の歌い手や、映画・舞台・テレビ・CMなどへの楽曲提供も精力的に行っている。2009年に芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2016年にはリオオリンピック・パラリンピック閉会式で東京への引き継ぎセレモニーの演出・音楽監督を務め、国内外から高い評価を得た。2026年、新作アルバム『禁じ手』を3月11日にリリース予定。3月17日よりライブツアー「椎名林檎 党大会 令和八年列島巡回」を開催予定。

 成田 いつも脱力してて緊張しない人間なんですけど、今日は無理です。自分が日本の音楽を聴く原体験が椎名林檎だったもので……。

 椎名 えーっ。そんな。

 成田 はじめて自分で稼いだお金で行ったライブが椎名さんで。歌舞伎町の今はないライブハウスで2000年にこっそりやられた「発育ステータス 御起立ジャポン」。

 椎名 あり得ない! もう嫌です、嫌です。それは嫌です。

 成田 嫌だろうなと予想してました(笑)。嬉しくなってきた(笑)。

椎名林檎氏(左)と成田悠輔氏 ©文藝春秋

 椎名 当時、おいくつですか?

 成田 14歳くらいだったかと。

 椎名 それは、早熟でいらっしゃるというか。よりによって……。

 成田 黒歴史ですか(笑)。

 椎名 かなり黒歴史です。あれは「後で悔やむようなことを若いうちにいっぱいしよう」と思ってやった最たるものというか。嫌だー。

 成田 逆に黒くない、素直に一番誇れる歴史ってありますか?

 椎名 なんだろう……たとえば、その頃からのお客さんのお嬢さんが大きくなって、親子で一緒にライブに来てくださるようになったことは、本当にやっていてよかったと思った出来事ではありますね。

 成田 ご自身の音楽を長く残すことってやっぱり意識されますか?

 椎名 結果的にそうかも。100年前の人が聴いたときに“自分たちの時代の音楽”として受け入れてくれるものを書こうと意識することはあって。やっぱり100年後にもちょっと欲があるのかもと今、気付きました。

 成田 歌詞もちょっとアナクロな言葉遣いをあえてされますよね。

 椎名 そうですね。なるべく語源に近い用法にしておきたい時はあります。曲によってですが。いつの時代の音楽なのか、分からなくしたい気持ちはある。

「六代目椎名林檎」

 成田 その起源への気持ちのきっかけってなんなんでしょう?

 椎名 ただ単に懐古趣味なんです。もともと私、この仕事でなければ、美大に行って美術の道に進もうと思っていました。その頃の友達の影響が大きいかも。それに器とか着物が好きなのも、時代を超えてきた洗練に惹かれちゃうんでしょうね。

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source : 文藝春秋 2026年1月号

genre : エンタメ 音楽