クマ退治3つの解決策

浅尾 慶一郎 前環境大臣・参議院議員
ニュース 社会 サイエンス

今こそ自然の管理が必要だ

 2025年度は、クマに襲われて命を落とした人が13名、傷を負った人が223名となり、過去最大の被害が出ています。出没件数は4万9226件、捕獲数は1万3499頭と、こちらも過去最多の数字となりました(以上、12月末までの速報値)。クマは日本に住む人々にとって、すでに災害級の脅威となっています。

 被害者の数が増え、出没件数が増えているだけではありません。その脅威の質が2000年ごろから確実に変化しました。それまではクマが生息する山や森林に入っていかなければ被害に遭うことはありませんでしたが、2000年ごろからはクマが人間の住む場所に現れ、人を襲うケースが増えたのです。

 人間の生活圏に現れるクマは「アーバンベア」と呼ばれています。特に昨年の北海道や東北でのアーバンベアの被害は深刻で、日常生活が脅かされました。クマの出没が日常的になった地域では、住民は不要不急の外出を控えざるをえず、観光客が激減し、通学路の安全が確保できないために休校とせざるをえない学校もありました。

人間の生活圏にも出没するようになった Ⓒ時事通信社

 私は2024年10月から2025年10月まで、石破茂前首相の下、環境大臣としてクマの被害を減らすべく努力してきました。クマの駆除をしやすいように法律を改正するなど、いくつかの対策を実行に移しましたが、クマ被害を根本的に減らし、人間がクマと日本列島で安心して共存していけるようにするための方策までには手が回りませんでした。そのことに忸怩たる思いを抱いています。

 しかし、1年間大臣を務め、クマ被害の対策にあたり、被害の現場を視察したり、環境省の職員や識者の意見に耳を傾けたりするうちに、中長期的にクマの被害を減らし、国民に安心・安全に暮らしてもらうための方策がはっきりと見えてきました。

 ここでは、その方策を示したいと思います。それを実行に移していくのは、国や地方自治体ですが、それを進めるためには、国民の皆さんの理解と協力が欠かせないからです。

 環境省は国民の皆さんに安心・安全に暮らしてもらうために、今すぐ実行しなければならない喫緊の方策を次々に打ってきました。

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 たとえば、2024年4月、計画的に捕獲して頭数を管理する「指定管理鳥獣」に、新たにクマ類を追加しました。また、2025年9月から市街地にクマ等が出没したときに市町村の判断でハンターに発砲を命じることができる「緊急銃猟」の制度を新たに導入しました。

 とはいえ、これらは対症療法にすぎません。クマは子どもを産むことで、総体としての数が毎年増えていきます。特に日本の山林は、のちほど説明する通り「富栄養化」が進み、エサとなるドングリが増えるばかりですから、もっと根本的な方策を取らなければいけない。そのための最も有効な方策は、森林を放置せず、「自然の管理」に国と国民が改めて真剣に取り組むほかないのです。

 具体的には、たとえば人間の生活圏に隣接し、クマの生息地となっている森林の一部をかなりの面積にわたって伐採し、開けた草原にすること。つまり「草原の緩衝地帯」をつくる。その目的は、クマを本来の生息域に封じ込め、人間の生活圏に出現するのを防ぐことです。このような思い切った方策に対しては、「森林を減らす大規模な自然破壊ではないか」という批判が寄せられるでしょう。

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source : 文藝春秋 2026年4月号

genre : ニュース 社会 サイエンス