永山祐子「自分の建築には徹底してエゴを出しません」

日本の顔 インタビュー

永山 祐子 建築家
ニュース 経済 アート

自分なりの解答は「動く建築」

※永山祐子さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧ください

 2025年は私にとって区切りの1年になりました。著作や作品集を出版し、ウーマン・オブ・ザ・イヤーなど賞もいただきましたが、特に印象的な経験が、大阪・関西万博です。

 今回は循環をテーマにしたパナソニックグループパビリオン・ノモの国と、女性がテーマのウーマンズ パビリオンの二つの設計に関わりました。万博のパビリオンを設計するのは、2021年のドバイ万博日本館についで2回目です。

 ウーマンズ パビリオンでは、92歳の女性芸術家・中谷芙二子さんとのコラボレーションが実現しました。中谷さんは、1970年の大阪万博で人工の霧を使った作品を初めて発表し、以後「霧の彫刻」とも称される作品で世界的に知られるアーティストです。

永山祐子氏 Ⓒ文藝春秋

 万博にとってアートは非常に重要な要素ですし、ぜひ一緒に仕事をしたいと思っていました。ドバイの時はうまく調整がつかず実現しませんでしたが、女性をテーマにしたパビリオンの設計に関われるならなおさら今度こそと、直接お願いに上がりました。

「前回から55年後の大阪万博で再び作品を発表することで、過去と未来が繋がる貴重な機会になるのではないか」「霧という現象を彫刻と捉える『霧の彫刻』と、『動く建築』として循環し続けるウーマンズ パビリオンは親和性があるのではないか」と説得。万博の最終盤で作品を披露していただけることになりました。

 パフォーマンス後、中谷さんから「本当にやってよかったわ」と言われると、緊張の糸が切れてつい号泣してしまいました。

ドバイから大阪へ「動く建築」

 建築は、設計から竣工まで時間のかかる仕事です。竣工年に合わせて常に前倒しで造り始めなければなりません。だから、造っているときに世間の空気と乖離することもあります。地元が歓迎ムードだったドバイ万博とは対照的に、大阪・関西万博は始まるまで逆風が続いていましたから、開幕の数ヵ月前にパビリオンが完成したときは、先行きに不安もありました。

 閉幕した今振り返ると、万博以後の活用などの課題は残っていますが、暗いニュースが多い現代日本で、特別な体験を多くの入場者と共有できる国際的イベントをやりきれたことは、とても良かったと思います。また、今回の万博は、私の中で引っかかり続けてきた疑問に、自分なりの解答を出す機会にもなりました。それは「動く建築」です。

 万博は、半年以上にわたり多くの人が来場する野外イベントです。ほぼ全ての建築が閉幕後には取り壊されてしまいます。これを概ね5年ごとに繰り返す。サステナブルなビジョンをうたう世界的イベントが、果たしてこれで良いのだろうか。私には疑念がありました。

 コロナ禍で1年延期になった4年前のドバイ万博日本館の設計で、ボールジョイントという、プラモデルのように部材を組み立てられるシステムを採用したのは、この思いがあったからです。会期後にバラして別の場所で組み立て直せばリユースできるのではないかと考えました。

 ありがたいことに、その思いを色々な方にお話しするうち、カルティエ、内閣府、経済産業省、博覧会協会が共同で出展する、今回のウーマンズ パビリオンでそれを実現できることになりました。

 もちろん、一筋縄ではいきません。そもそもはドバイで解体する前提ですから予算はない。また、解体後には1万個以上にもなるパーツを、コンテナに詰め込んで運んだ後で再び適切に組まなければいけません。まして、目指していたのは同じものを同じように別の場所に造る移築ではなく、その場所に合った別の建築に生まれ変わらせるトランスフォーム。イチから設計を考え直し、新しい場所にふさわしいものにする必要がありました。

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source : 文藝春秋 2026年2月号

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