創業者がやっていたことはだいたい正しかった
4月末から5月初旬にかけて、大阪・関西万博に行ってきました。観光じゃありません。一介のボランティアとして参加したんです。5日間の参加が必須だったので、ゴールデンウィークを利用しつつ、平日も3日間休暇をもらって行ってきました。会長がボランティアで3日も休むなんて、社員たちは呆れているかも知れませんが、どうしても行ってみたかったんです。もともと学生時代からボランティアが好き。学生時代もYMCAで子供たちを引率してキャンプに行っていました。アシックスでも会社としてボランティア活動を推奨しています。神戸マラソンのタオル掛けボランティアを会社の皆とやったりもしました。なんでも現場を見てみないと気が済まない性格なのかもしれません。
万博に参加してみて思ったのは、「やっぱり傍観者のままではわからないことがある」ということでした。今回の万博については開催前からいろんな意見が飛び交っていましたが、実際には素晴らしいイベントになっていました。
当初募集されていた2万人のボランティアの枠に5万人以上の応募があったそうです。それで3万人まで増員されたようですが、それでも抽選になって、周りでは落選している人も多かった。私は当選できてラッキーでした。
会長の肩書きを離れて
いま私が着ているのが、ボランティアに支給されるユニフォームです。万博が終わったらいただける。帽子とTシャツにベスト、ポシェットの一式ですね。ベストの胸元には公式キャラクターの「ミャクミャク」。ボランティアはみんなこれを着て、その日ごとに3、4人のチームを組んで活動をします。毎回メンバーは違いますし、名刺交換をしたり、互いの素性を明かしたりはしません。私も1人の68歳の男性としての参加です。普段は指示する立場の私が、ボランティアの現場では指示される役割。指示する側がどんなふうに見えているか、よくわかりましたよ。正直、ディレクションが不明瞭で現場が混乱したり、戸惑ったりする場面もあった(笑)。とても新鮮な体験でした。
3期連続で過去最高益を更新しているスポーツブランド「アシックス」。国内外でランニングシューズの販売が好調でインバウンド需要も取り込み、営業利益は初めて1000億円を突破した。2025年12月期の連結純利益は780億円と過去最高益を見込む。7月1日時点の時価総額は2.7兆円を超えているが、これは2017年末の約8倍という急成長だ。
だが、その道のりは決して平坦ではなかった。2018年には20年ぶりの最終赤字に陥り、コロナ禍の2020年には、国内外店舗の休業などもあって営業赤字に転落。2021年には箱根駅伝での自社製シューズ「着用率ゼロ」という大きな挫折も味わった。厳しい逆風が吹き荒れる中、2018年3月から同社の経営トップを務めているのが廣田康人会長CEO(68)だ。三菱商事で広報部長や総務部長、常務執行役員などを歴任し、関西支社長として大阪に赴任した2017年、アシックス社長就任の打診を受けた。
V字回復の立役者である廣田氏がなぜいま万博のボランティアに参加したのか。そこには現場感覚を決して忘れないという廣田氏の仕事哲学があった。

僕の見る限り、ボランティアとして参加した中では、男性は大体僕みたいな70歳前後の人が多かった。会社勤めを終えて少し時間に余裕のできた年配の男性たちです。僕もそう思われたのでしょうね。女性は下は学生さんから上は僕ぐらいの年齢の人までどの世代もまんべんなく参加していたように思います。
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source : 文藝春秋 2025年9月号 万博覆面ボランティアの5日間

