バラエティー番組に出演し、ミニスカート姿に甲高い声で人気を博した女性実業家・大屋政子(1920〜1999)。「派手好き」のイメージが強いが、娘の登史子氏は「母は自宅では実に質素だった」と言う。
「没落したらあかんねん」
これは、母の大屋政子が生前、口癖のように言っていた言葉です。
強烈なほどの負けん気を出すようになった背景には、自身の生い立ちが深く関係しています。
私の祖父が代議士の森田政義で、祖母のトクノも大阪の大地主である柴谷家の生まれと、母は裕福な家庭で育ちました。オペラやバレエを習うなどお嬢様として育てられていましたが、18歳で祖父を亡くすと、間もなくして祖母の実家も破産してしまいました。一気に金銭苦となり、祖父が世話をしたという府議会議員を頼ったが、会ってさえもらえなかった。母にとってこの出来事は相当な屈辱で、以来「負けたらあかん」と思うようになったそうです。
転落から這い上がろうとする母の大きな転機は昭和25(1950)年。繊維メーカー帝人の元社長で、この時、吉田茂内閣で運輸(現・国土交通)大臣を務めていた大屋晋三と結婚してからでした。閣僚に就いていた父ですが、選挙の度に大きなお金を動かしていたことから、実は借金を抱えていたほど。そんな生活のなか一肌脱いだのが母でした。
あるとき、「家にいても収入が得られる」という目的で大阪・周防町にアパートの建設を決めたものの、銀行が融資をしてくれなかった。そこで母は「貸してくれるまで帰らん!」と、6時間以上も居座ったといいます。最終的に「大屋晋三の妻」という肩書を担保にお金を借りられたそうですが、この大胆な行動は「決断=即実行」を身上とした、実業家としての母の原点だったように思います。
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