ある時は裏方として、ある時は出演者として、様々なメディアで活躍した永六輔(1933〜2016)。娘で元フジテレビアナウンサーの永麻理氏が思い出を語る。
「永六輔の職業は何か?」と聞かれると、娘の私や姉(千絵)でさえ、説明に困ってしまいます。
放送作家、ラジオパーソナリティ、作家、舞台監督……「マルチタレント」のパイオニアのような存在でありながら、この呼び名もどうもしっくりこない。それだけ父は自由闊達に仕事をしていました。
そんな父を形作ったのは、生まれ育った東京の下町です。浅草で代々続く最尊寺の住職だった私の祖父・忠順は、落語や文学などにも造詣が深い学僧でした。父も幼少期から自然と寄席や芸能に興味を持ち、中学時代からNHKのラジオ番組『日曜娯楽版』にコントを投稿。大学を中退するほど放送業界にのめり込んでいったなか、父親の影響の他に、民俗学者の宮本常一先生の教えも生涯に渡って大きなものでした。
民放ラジオが開局し、テレビ放送も始まろうとしていた昭和20年代。父は民俗学にも強く惹かれていたと言いますが、恩師の宮本先生からこう導かれたそうです。
「放送の世界に進むのなら、覚えておいてほしい。電波はどこへでも飛んでいく。その先にどんな生活があるのか、人々はどう暮らしているのか。現地で見て、聞いたものをスタジオに持ち帰って伝えなさい」
シナリオを書くだけに留まらず、日本全国を歩き回って自ら出演して喋り、視聴者に情報を届ける。そんな父は、平易かつ的確に相手に伝える「言葉の達人」でした。
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