歌い継がれる名曲から花火のように輝いて消えたヒット曲まで、心を震わせた歌の数々を語り尽くす
あのときの私がよみがえる
――本日は「後世に遺したい昭和歌謡」100曲を選ぶために皆さんにお集まりいただきました。
事の始まりは、五木寛之さんから「昭和歌謡」を文化遺産として遺すために名曲を選び、『昭和万謡集』として編むべきではないだろうか、というご提案をいただいたことでした。本誌はまず昭和20(1945)年から64(1989)年までに発表された歌から「後世に遺したい昭和歌謡3曲」を識者が選ぶアンケートと「あなたの好きな昭和歌謡3曲」を読者に訊くアンケートを実施し、その結果を掲載しました(2024年2月号)。
今日はその結果を踏まえて、お集まりいただいた6名の方に「後世に遺したい昭和歌謡」20曲を選りすぐって持ち寄っていただきました。その曲目を基にした討議を経て、『昭和万謡集』に収める100曲を選んでいければと思っています。まず皆さんがどのような思いで20曲を選んだのかをお話しいただけないでしょうか。
五木 20曲に絞るのが本当に難しくて、涙を吞んで選びました。このような企画では、時を超えて今でも愛される普遍的な名曲を選びがちですが、その時の日本人の感情を掴み取り、結晶にしたがゆえに爆発的なヒット曲にはなったけれども、瞬く間に忘れ去られてしまったような歌もなるべく入れるように努めました。花火のように打ち上げられ、一世を風靡し、美しい花を咲かせるけれども、一瞬で燃え尽き消え去ってしまうのもまた、歌謡曲の本質の一つだと思うからです。
歌謡曲にある「もののあわれ」
藤原 20世紀最高の文化人類学者と言われるレヴィ=ストロースは、世界中の音楽を聴いたけれども、どこの音楽も好きになれなかった。ところが、日本で歌謡曲を聴いたら、自然と胸に沁み込んできたそうです。「もののあわれ」がその底流にあるからだと彼は気づいた。その通りだと私も思いますので、もののあわれが濃厚に感じられる歌を中心に選びました。日本ではそれがないと流行らないんです。世界を見渡してみると、ポルトガルのファドが日本の歌謡曲に少し似ている。ファドは恋人や両親など、亡くなった大切な人々を思い出して泣き濡れるといった歌ばかりです。
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source : 文藝春秋 2024年12月号