昭和歌謡の底力

第16回

内館 牧子 脚本家

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 作家の五木寛之さんが「千年先まで残る100曲を選びたい。そしてこれを『昭和万謡集』と名付けたい」とされたのは、本誌2023年11月号である。

 その後、各界の34人の方々が、自分にとっての昭和歌謡ベスト3曲を選んだ。今年の2月号にその結果が載っている。それが実に多種多様で、「えッ? この人がこの歌を選ぶんだ」と驚くことも多く、とても面白かった。

 そしてこの9月、五木さんのもとに数学者の藤原正彦さん、政治学者で音楽評論家の片山杜秀さん、歌手のジュディ・オングさん、エッセイストの酒井順子さん、そして私の五人が集った。100曲を選ぶのではなく、自分にとって外せない、これだけは遺したい昭和歌謡について、勝手な意見をガンガン言うためだ。濃い座談は3時間を超えた。ここまで熱が入るのだから、昭和歌謡とはたいしたものである。

 私たちは、その「たいしたもの」の中から、前もって20曲を選んで出席する。私はそれをやりながら、強く感じていた。歌謡曲、流行歌というものは、その時代の考え方、社会の潮流、世相、その中で生きていた自分、家族、周囲の人々を甦えらせる。下世話なこともすべてだ。

 これは他の音楽より強いのではないだろうか。

 私は昭和23年生まれの、団塊世代である。国中に子供がひしめいていた。何をするにも、何を手に入れるにも競争で、コンプライアンスもない社会。パワハラもセクハラも蔑視も、当たり前に太陽の下で行われている時代だ。その中で生きた同世代を思うと、時代を伝えるためにも、この歌は外せないとなる。わずか20曲を選ぶのは至難。

 私が人生には色々な困難があると感じたのは高校2年生か。大学受験はペーパーテストの1回のみ。失敗できない。

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source : 文藝春秋 2024年11月号

genre : エンタメ 昭和史 芸能 音楽