この告発は、ジャニー喜多川氏の性加害が社会問題化する直前の2023年2月から行われた。加害者は住所不定無職の50代で、精神障害者。男児・女児問わず子どもを誘拐する常習者だった。そして、事件の深刻な影響は、事件のずっと後になってから、“時限爆弾”のように表れた――。性暴力の実情を長年取材するジャーナリストの秋山千佳氏による徹底取材。性暴力の実情を長年取材するジャーナリストの秋山千佳氏が徹底取材した。(前編はこちら)
「妹も弟も、今は僕のことを嫌っています」
赤池雄介がいつも持ち歩いている手帳には、2枚の写真が挟まれている。
1枚は、幼稚園生の頃の自身の写真。もう1枚は、小学6年生の子どもの日に撮影された写真で、妹や弟と肩を組んだり手をつないだりして並んでいる。
「この頃は幸せでしたね。だから手帳に挟んでいるんです」
幼稚園時代はともかく、小学6年生は性被害に遭った後だ。それでも今より幸せなのか。
「妹も弟も、今は僕のことを嫌っていますから。妹は結婚して子どもがいるんですが、実家に帰ってきた折、子どもが僕のことを見ると目を手で覆い『あの人を見ないで』『あの人の近くに行っちゃダメ』と言うんです。学生時代は勉強を教えたこともあったんですけど……」
赤池は高校2年生で強迫性障害という診断を受けた際、医師からは「没頭できる何かを見つけて病気とうまく付き合っていきましょう」というアドバイスがあった。
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