女優

第15回

内館 牧子 脚本家
エンタメ 社会 芸能

 最近、「女優」という肩書きを使わず、「俳優」にする動きが、メディアを中心に広がっている。これまで「女優」は女性演者を示す言葉であり、「俳優」は多くの場合、男性演者を示していた。

 女性演者をも「俳優」とする理由にはおそらく「男女平等」の考え方があるのではないか。演じるという役割は、男女共に同じである。女性だけを「女優」とするのは差別だという考え方は、ありうることだと理解できる。

 実際、これまでにも男女差をなくす方向で、多くの肩書きが変わった。

 かつては当たり前だった「女流」という冠を、今もつける人はいないだろう。「女流作家」「女流画家」等々は、とっくに死語である。

 また、「婦人警官」は「婦警」と呼ばれて浸透していた言葉だが、いつの頃からか「女性警察官」になった。「保母」は「保育士」になり、「スチュワーデス」は「キャビン・アテンダント(CA)」あるいは「客室乗務員」になった。「看護婦」は「看護師」になった。

 これも今では聞かないが、最近まで女性の医師は「女医」と呼ばれていた。そして「女性カメラマン」や「女性監督」「女性プロデューサー」「女芸人」など、「女性」をつける肩書きも少くなかった。

 私の推測だが、男性社会に切り込んで行った職種に「女流」や「女性」をつけていたように思う。一方、「保育士」や「看護師」のように、男性志望者がふえたことで変更したものもあるだろう。

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source : 文藝春秋 2024年10月号

genre : エンタメ 社会 芸能