1兆円突破「ふるさと納税」は本当に「三方よし」の制度か

総額1兆円、利用者1000万人超の制度

佐々木 亮祐 ジャーナリスト

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社会 政治 経済

 2023年度、ふるさと納税の市場規模がついに1兆円の大台を突破した。

 ふるさと納税制度は、故郷の自治体や応援したい自治体など任意の自治体に寄付をすると、実質2000円の自己負担のみで住民税などが控除される制度である。さらに寄付先の自治体から、寄付額の約3割相当の返礼品がもらえる。

ふるさと納税仲介事業へ参入するアマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長(左から2人目) ©時事通信社

 08年の制度創設から数年は知る人ぞ知る地味な存在だった。しかし12~15年に「ふるさとチョイス」や「楽天ふるさと納税」など大手ポータルサイトが次々に誕生すると、サイト間の競争を伴ってマーケティングや利便性向上の施策がなされていった。15年には税控除が住民税の1割から現在の2割へと拡大され、「お得な制度」として一気に認知が進み、飛躍的に寄付額を伸ばしていった。

 この制度は「三方よし」と紹介されることも多い。寄付先の自治体、返礼品をもらえる寄付者、返礼品の生産事業者の三者が得をするからだ。

 しかし一方で、寄付者がふるさと納税をしなければ住民税を納めるはずだった居住自治体では、税収が「流出」することになる。「流出」は国から地方交付税の形で4分の3は補填されるものの、地方交付税を受け取っていない自治体ではその補填がない。神奈川県川崎市、東京都世田谷区などでは、23年度単年で100億円以上の税収が流出している。

画像はイメージです ©hika_chan/イメージマート

 ほかにも多くの課題を抱えている。

 その一つがポータルサイトの価格決定力が強く、手数料率が高止まりしていることだ。最も早く事業を始めたふるさとチョイスは長らく2~3%で運営してきたが、現在大手サイトの手数料率は10%程度で横並びとなっている。民間企業の価格設定は原則として自由であるべきだが、本来自治体に入るべき税収1000億円程度がサイトに流れている。

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