暴力の行使に自己の存在理由を見出している
自身もユダヤ系である仏の歴史人口学者・家族人類学者のエマニュエル・トッド氏は、「イスラエル・ガザ紛争」に関して発言を控えてきたが、このほど伊のオンライン誌「Krisis」のインタビューで、初めてこの問題にコメントした。その後、トッド氏は同記事を自身で仏訳・再編集して仏のオンライン誌「Élucid」に掲載した(Le nihilisme peut expliquer le comportement d’Israël à Gaza,2024年12月1日公開)。以下は、その全文の邦訳である。
――2023年10月7日に「虐殺」〔ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃〕があったことに議論の余地はありません。しかし、これに対するイスラエルの反応はまさに「大殺戮」でした。にもかかわらず、西洋のエリートたちは容認した。これをあなたはどう説明しますか。
私は『西洋の敗北』〔大野舞訳、文藝春秋〕という新著で「ニヒリズム」という概念を提示しました。ニヒリズムとは、「物や人々や現実を破壊したい」という欲求や衝動のことで、今日の西洋における宗教的、形而上学的、価値観の「空白」から生じているものです。これは社会的・歴史的な問題で、私はとりわけ米国のニヒリズムについて研究し、ウクライナのニヒリズムにも言及しました。
『西洋の敗北』のフランスでの刊行以降、「ニヒリズム」という概念のより一般的な有効性が明らかになりつつあるように見えます。マクロン大統領の奇妙な振る舞いを始め、フランスエリートたちの態度を考察するのに、私はニヒリズムの概念を適用し、ドイツの一部のエリートの「好戦主義」や非現実的な「無制限の移民受け入れ」の分析にも適用しました。そして「イスラエルでの出来事」にも適用したわけです。
私は常に「イスラエルでの出来事」という言い方をしています。ガザは、イスラエルの政治的主権が及ぶ地域でイスラエルの一部だからです。その点で「ハマスはテロ組織である」と認めたがらないコメンテーターはまったく理解できません。ハマスがテロリズムを実践しているのは事実で、しかもハマスはイスラエル国家の支配空間に生まれたもので、今もそこに帰属しています。ハマスとは「イスラエルの現象」なのです。
――どんな意味においてですか。
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