「デジタル治外法権」の放置は国民への背信行為だ
2025年春からアップル・ウォレットでマイナンバーカードが利用できる――。アップルから突然の発表があったのは2024年5月30日(日本時間)だった。その日の朝、岸田文雄首相(当時)とアップルのティム・クック最高経営責任者の「トップ会談」で合意に至ったという。
アップル・ウォレットとは、デジタル化したクレジットカードや交通系ICカード、搭乗券などを一元管理するiPhone用のお財布アプリだ。米国では運転免許証などの身分証明書も入れられる。ここに日本のマイナカードを入れて利用できるようにするというのである。
マイナカードのスマホ搭載を巡っては、既に2023年5月から、グーグルがOSを提供するアンドロイド端末で一部機能が使えるようになっていたが、日本政府の再三の要請にもなかなか首を縦に振らないアップルの対応が注目されていた。
ただ、アンドロイド端末で既に実装されている機能と、今回、iPhoneに搭載されるものには大きな差がある。「マイナカード」と「マイナンバー」の違いを意識していない人もいるかもしれないが、アンドロイド端末で利用できるのは、「マイナカード」のICチップに搭載された電子証明書機能である。一方、今回のiPhoneの場合は、マイナカードの券面に記載されている「マイナンバー」を、氏名、住所、生年月日、性別の「基本4情報」や顔写真と一緒にスマホ上で管理できるようにするのである。
ほとんど議論されずに法案成立
この間、筆者は違和感を拭えずにきた。
既にアンドロイド端末で実現している電子証明書機能を使えば、多くの行政手続の申請は可能だ。一方、マイナンバーをスマホで管理することで、何が新たに便利になるのか。例えば、確定申告などマイナンバー法上の本人確認が必要な手続の際、物理的なカードを持ち歩く必要がなくなることなどだろうか。
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source : 文藝春秋 2025年2月号