混迷するドイツ、リベラル派の罪

斎藤 幸平 東京大学大学院准教授

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EUの模範的存在だったドイツが窮地に立たされている。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエル問題の対応に苦慮する中、難民の増大で社会不安が広がり、ポピュリズム政党が台頭している。

 

この夏にドイツに拠点を移した哲学者の斎藤幸平氏と、日本で翻訳などを手掛けるドイツ人のマライ・メントライン氏が、ドイツの今について語り合った。

 マライ 斎藤さんは、ドイツのハンブルクに拠点を移したんですね。

 斎藤 はい、ハンブルクの研究所に2024年8月から籍を置いています。そこで気候変動問題に取り組むための、新しい経済システムについて共同研究をしています。

 マライ 同じ北ドイツのキール出身なので、斎藤さんが故郷にいる感じがして、嬉しいです。ドイツでの生活はいかがですか?

 斎藤 ハンブルクの街は気に入っていますが、今、ドイツ各地で問題になっている「インフラ崩壊」を日常的に目の当たりにして、不便なことも多いです。10年ほど前、大学院時代をベルリンで過ごしましたが、当時と比べて、「ドイツってこんな国だったっけ?」と。研究用の資料が入った箱が4つもロストバゲージで届かなかったり、いつも鉄道が大幅に遅れたり、インターネットの接続が異常に遅かったり……。EUの中でも裕福な都市として知られるハンブルクでさえ、以前はなかった日常生活の支障が生じています。

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