尹錫悦大統領の自爆で日韓どうなる

緊急特集 崩れゆく国のかたち

黒田 勝弘 神田外語大学客員教授・産経新聞ソウル駐在客員論説委員
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「従北朝鮮・反国家勢力」の罠にかかってしまった

 大胆な対日接近策で日韓関係を改善させた韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権が、崩壊してしまった。突然の戒厳令騒ぎと大統領弾劾で韓国は一気に政権交代に向け走り出した。先が見えない韓国内政の展望もさることながら、きたるべき政権交代は日韓関係への影響必至である。

 筆者はちょうど1年前、昨年2月号の本誌に「『韓国の親分』尹錫悦大統領の勇気」と題する論評を書いた。思い切った日韓関係改善策を「ノーベル平和賞級」などと高く評価したものだった。最後に内政上の懸念は指摘しておいたものの、今回の事態はもちろん想定外である。昨年のタイトルをもじっていえば、今回の戒厳令宣布は「蛮勇」ということになろうか。以下は残念感を込めた尹錫悦政権への“挽歌”である。

 尹大統領の「非常戒厳宣布」は2024年12月3日の夜、テレビの通常番組を中断し本人の談話として発表された。午後10時20分ごろだったか。

「血を吐くような心情で国民の皆さまに訴える」で始まり、この間、議会多数を占めた野党の横暴によって政府の人事や予算処理が妨害され、国家機能や国政がマヒしてきたなどと語り、これは「(自由民主主義の)憲政秩序を踏みにじり(中略)内乱を画策する反国家行為」であるとし、最後の3分の1あたりで「(こうした)従北反国家勢力を一挙に追放し、自由憲政秩序を守るため非常戒厳を宣布する」ときた。

 一瞬「ん?」「戒厳令?」となった。まったくピンとこなかったのだ。これはほとんどの国民がそうだったろう。日ごろ与野党対立が激しく、国会がもめにもめ、お互い非難合戦に終始している政治状況はみんな知っているが、その打開策に「戒厳令」とは、まったく現実感がなかったのだ。

前回の戒厳令は「成功」だった

 韓国での戒厳令は、1979年10月26日の朴正熙(パクチョンヒ)大統領暗殺事件以来だから45年ぶりである。あれから半世紀近く経っており実感できる世代は少ない。

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source : 文藝春秋 2025年2月号

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