韓国は昨年、右派・保守系の尹錫悦政権がスタートし、文在寅・前政権下の親北・反日政策の手直しや韓米日協力体制の復元、強化に懸命に取り組んでいる。しかし議会は多数派である前政権の共に民主党(野党)に握られ、公営放送のKBSテレビやMBCテレビをはじめメディアも依然、前政権派が影響力を持ち、新政権は苦戦が続いている。支持率も低迷している。
にもかかわらず尹大統領の対日関係修復と“脱・反日”の意思は強固である。その思いは最初の「8・15光復節記念演説」で語った「日本は今や世界市民の自由を脅かす挑戦に立ち向かい共に力を合わせて進むべき隣人です」という日本観に表れている。政策目標としてこの姿勢が今後も維持されることは間違いない。
懸案の徴用工問題についても解決に向け苦心しており、その結果を踏まえ新年には念願の首脳による“シャトル外交”もありうるが、目標とする“脱・反日”ははたして可能か。韓国の“宿痾”である反日は、左右・保革を問わず歴代政権で繰り返されてきた。政権交代ですぐになくなるようなものではない。
しかし左派・革新系の文政権下の度を越した反日扇動を経て、韓国社会に“反日疲れ”が見られるのも事実だ。「また反日か」と、世論がそれほど興奮しなくなっているのだ。とくに政治的な反日利用には「時代錯誤」あるいは「時代遅れ」感が語られるなど変化の兆しがうかがわれる。
日本では依然として、反日売名家や反日団体による“反日パフォーマンス”がネットニュースなどで強く印象付けられているが、実態として反日インパクト低下は著しい。それには政権交代が微妙に影響している。保守政権下で“反日のお値段”は明らかに下がっている。
その意味で昨年秋の野党陣営による尹政権批判に対する“反日攻勢”の結果は興味深い。かたちとしては大統領選で敗れた李在明(民主党代表)による尹錫悦に対する嫌がらせ的な巻き返しだったが、新政権へのダメージを狙った野党の反日カードは見事な空振りに終わった。今なお韓国では「親日」が「売国」を意味する。そこで野党陣営は早速、「尹政権は親日政権だ!」として非難キャンペーンを展開しかけたが、世論は動かなかったのだ。
ヨーカン(用韓)のすすめ
このところ朝鮮半島情勢の最大懸念は北朝鮮による“ミサイル乱射”である。これに対し尹政権は昨年10月、日本海で海上自衛隊も参加した韓米日の共同軍事演習を実施した。ところが李在明はこれを「極端な親日行為」「親日国防」「日本軍が韓半島に進駐する」などと声高に非難し、日本警戒論をぶち上げた。
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source : 文藝春秋 2023年2月号