4年おきに行われるアメリカ大統領選挙は、国内だけでなく世界の関心をひきつけて止まない。もはやアメリカだけが繁栄する国家のモデルとはいえず、世界におけるその役割も急速に変わりつつある。それでも、アメリカ政府の次の一手や選挙であぶり出されてくる新旧の価値観をめぐる葛藤にも、私たちは大きな影響を受ける。未だにアメリカは世界にとって稀有な存在なのである。
2025年には、民主党のカマラ・ハリス副大統領が初の女性大統領として誕生しているのだろうか。それとも共和党のドナルド・トランプ元大統領が再選しているのだろうか。それぞれが当選したときに、世界にどのような影響があるか、分けて考えてみたい。
予測の立てやすいカマラ・ハリス政権
まず、ハリス氏が選出された場合についてである。高齢のバイデン大統領に代わるためだけに、予備選もなしに急ごしらえで選ばれたハリス氏は、トランプ再選を防ぐための民主党の団結に担がれた存在だ。かつてオバマ大統領誕生を実現したような熱狂的な支持に裏打ちされているわけではない。政治家としての経験は短く、とくに外交には知見が及んでいないとみられる。
大統領選と同時に実施される連邦議会選挙では、共和党が上院を押さえる公算が高く、下院は民主党が取り戻せるかもしれない。それでも、ハリス政権は2年後の中間選挙で最初の審判を受け、さらに2年後の2028年大統領選挙を現職として勝利することが求められる。選挙が脳裏から離れないなかで、まず彼女が専念するのは経済の立て直しであり、不法移民問題への対応などになろう。
外交ではバイデン政権が一貫して重視した、世界戦略における「挑戦者」中国という構図をどこまで維持できるのか、それを見極める必要がある。
バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻、ガザ危機というサプライズに対応を続けながら、中国のみがアメリカの国力に追いつき、その世界戦略を左右するライバルだと認めた。そして、同盟や国際秩序、さらには貿易や投資を管理する経済規制を総動員しながら、どうにか優位性を保つための仕組み作りに奔走した。トランプ政権が対応を本格化させた米中対立だったが、長期化する力比べに勝ち抜くための体制作りを完成させようとしたのがバイデン政権だった。だからこそ、2023年11月にサンフランシスコで行われた米中首脳会談やそれ以降の対話ムードにみられるような、短期的には危機を回避するメカニズムの構築も必要と考えられたのである。
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