米大統領選投開票日まで100日を切った2024年8月2日、大統領選から撤退したジョー・バイデンに代わり、カマラ・ハリス副大統領が民主党候補に指名された。黒人・アジア系の政治家が、主要政党の大統領候補に選ばれるのは初めてだった。
ハリス以前に女性大統領に最も近づいたのはヒラリー・クリントンだ。ビル・クリントン大統領夫人から上院議員、国務長官と、政治家としてのキャリアを着実に積み上げ、満を持して大統領選に挑み、トランプと戦ったが、接戦州で競り負けて敗北した。敗北を認めた演説をクリントンはこう締め括った。
「(女性大統領という)最も高くて硬いガラスの天井はまだ打ち破れていないが、いつか誰かが、私たちが考えているより早く達成してくれるだろう」
「ガラスの天井」とは、経営コンサルタントのマリリン・ローデンが1978年に生み出した言葉で、女性のキャリアパスを阻む見えざる障害を意味する。アメリカの大統領は、世界最強の米軍の最高司令官でもある。軟弱、決定力がない、感情的……女性に対するステレオタイプが最も影響するのが安全保障問題であり、国防は女性には担えないという偏見も依然として根強い。アメリカ大統領という「ガラスの天井」は、確かに「最も高くて硬い」といえるかもしれない。
さらに女性たちが皆、「ガラスの天井」を一刻も早く打破することで一致しているわけではない。2016年、クリントンは「I'm with her(私は彼女の側にいる)」というスローガンを掲げ、ジェンダー平等の実現に向け、女性大統領を誕生させる必要があると訴えた。しかしこの戦略はうまくいかなかった。
出口調査によれば、クリントンは、女性への差別発言を繰り返したトランプよりは多くの女性票を獲得したものの、その割合は54%対39%で、圧倒的な差はつけられなかった。人種別にみると、黒人女性やラテン系女性は圧倒的にクリントンを支持したが、白人女性については、大卒ではクリントン票が勝ったが、非大卒ではトランプ票が勝った。「I'm with her」という言葉に託されたジェンダー平等という目標は、必ずしもすべての女性を惹きつけなかったのである。
女性政治家を取り巻くこうした状況は、8年間で変わったのだろうか。ハリスが正式に民主党の大統領候補者として指名された直後に発表されたCBSニュースの世論調査では、「アメリカは黒人女性を大統領に選ぶ準備ができているか?」との質問に対し、68%が「はい」と答え、「いいえ」と回答した32%の2倍超となった。
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