21世紀は「倫理資本主義」の時代です。世界で最初に持続可能で、かつ倫理的な資本主義体制をつくった国が、今世紀で最も豊かなスーパーパワーになるだろう――。数年前から私はそう主張しています。簡単にいえば、倫理資本主義とは、消費者も生産者も経営者も労働者も誰もがいいことをして利益を得るという考え方です。
今、人類が直面している真の危機、最大の危機は2つあります。環境危機と経済危機です。
ただ、拙著(『暗黒の時代における倫理的進歩』未邦訳)にも書いたのですが、「危機は倫理的進歩をもたらす」と考えています。人類には自分たちの置かれた状況を改善する多大な可能性があります。危機に直面して、人類は倫理的に行動してきたと思っています。
倫理資本主義について詳しく語る前に、まず「倫理」とは何かを説明しましょう。
倫理は、「道徳的事実(moral facts)」の性質と範囲を研究する学問である哲学の一分野です。事実にはさまざまな種類がありますが、たとえば2+2は4であって、4以外の数になることはあり得ないというのが、数学的事実です。数学的事実を尊重しなければ、道や橋は建設できません。同様に、あなたが道徳的事実を尊重しないのなら間違いを犯しています。また、道徳的事実はいかなる社会においても、社会を安定させるために重要なのです。
道徳的事実は「道徳的現実(moral reality)」と言ったら、わかりやすいかもしれません。例をあげましょう。
今、目の前で、子どもがそれほど深くない川でおぼれているとします。しかし、あなたは冷えたビールを手に持っていて、暑いので飲みたいと思っていました。冷えたビールを飲むか、おぼれている子どもを助けるか、どちらかを選択しなければなりません。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : ノンフィクション出版 2025年の論点