トランプvsハリス 決戦前夜の大討論

グレン・S・フクシマ 米国先端政策研究所上級研究員
冨田 浩司 前駐米大使
横江 公美 東洋大学教授
栗崎 周平 早稲田大学准教授

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史上稀にみる接戦を制するのはどちらのカリスマか?

 フクシマ 9月10日夜に行われたテレビ討論会は、両候補が初めて直接対決する場として世界中の注目を集めました。率直に言って、カマラ・ハリス(59)が勝者でした。CNNの調査では63%、YouGov社の調査でも54%がハリスに軍配を上げました。共和党支持者もドナルド・トランプ(78)の振る舞いにはガッカリしたようです。

 栗崎 ディベート技術という点ではハリスの圧勝でした。象徴的だったのが、「ハイチ移民は近隣住民のペットを食べている」というトランプの発言。本来、こうした事実無根の差別的“トランパガンダ”(トランプ+プロパガンダ)は、彼の十八番のはず。それが単なる自爆発言に終わってしまったのは、ハリスの挑発にのせられて冷静さを失い、移民に不安を感じている近隣住民の苦悩を強調できなかったからでしょう。

“画力”に定評のあるカマラ・ハリス候補 Ⓒ時事通信社

 横江 ハリスとしては、してやったりでしたね。というのも、“棚ぼた”立候補後、彼女が公の場で語ったのはCNNでの短いインタビューと、民主党大会でのスピーチだけ。過去10年にわたり共和党の看板役者を務めるトランプに対して、有権者が人物像を知る機会が限られていた。そのため、「ハリスに大統領としての実力があるのか?」が最大の関心事でした。

 冨田 ポイントはまさに、ハリスが自身をどのように「定義」できるかでした。トランプが「彼女はバイデン」「マルクス主義者」とレッテルを貼り、失政に加担した“過激なリベラル”政治家だと印象操作をしてきたのに対し、「私はジョー・バイデンではないし、もちろんドナルド・トランプでもない」と冷静にかわしていた。落ち着いた態度で、変化をもたらす新しい指導者であるとアピールできたと思います。

どこまでも“トランプ政局”

 フクシマ 今回の選挙は、7月21日にバイデンが撤退を表明したことで情勢がガラッと変わりました。それまでは“ダブル・ヘイター”と言って、「どちらの候補も大嫌い」という人が多かった。トランプになってもバイデンになっても、社会は決してよくならないという閉塞感が政治的無関心を引き起こしていた。それがハリスの登場で、民主党は一気に活気を取り戻しました。とりわけ、若者、女性、非白人の間で爆発的に支持が広がった。2008年のバラク・オバマ人気に匹敵するとまでは言えませんが。

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source : 文藝春秋 2024年11月号

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