インフレに克つ 臆病者の資産防衛術

緊急特集 首相誕生

橘 玲 作家

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個人向け国債で「確実な損失」という選択肢も

 ロシアがウクライナを侵攻し、資源価格が上昇した2022年から急速に円安が進み、今年6月には1ドル=160円台の「超円安」になった。これによって国内の物価が上昇し、インフレ率を勘案した実質賃金は2年以上も下がりつづけ、日本人はどんどん貧乏になっていった。

 そんな「安いニッポン」に殺到したのが外国人観光客で、一杯3000円を超える高級ラーメン店を満席にするのは北米やヨーロッパ、アジアからの観光客ばかりだ。私が1990年代に「発展途上国」と呼ばれていた東南アジアを旅したときは、高級ホテルのカフェやレストランにいるのは9割がヨーロッパ系白人、1割が日本人で、地元の顧客の姿はまったく見なかった。「衰退途上国」と揶揄される日本は、そんな国になっていくのかもしれない。

 7月になると、「行き過ぎた円安」を修正するために財務省が大規模な為替介入を行ない、一転して円高が進んだ。すると8月5日に、日本株に投資していた外国人投資家や株式取引のアルゴリズム(ボット)の投げ売りによって、前週末比12.4%(4451円28銭)安という株価の「歴史的暴落」が起きた。翌日には大きく上昇したものの、その後も不安定な状況が続いている。

 株式市場が乱高下したことで、今年に入ってNISAで株式投資を始めたひとが動揺しているという。その不安を軽んじるわけではないが、これはまるっきり理屈に合わない。

 株価の暴落で驚いて売り、株価が上昇したときに、さらに上がるだろうと買っていたのでは、「高いときに買って、安いときに売る」を繰り返すわけだから、どんどん損が積みあがっていく。これは考えられるなかで、最悪の投資法だ。

8月5日の株価暴落 Ⓒ時事通信社

 だったらどうすればいいのか。シンプルな答えは、「なにも気にせず、放っておく」になる。日本株は1989年末のバブル最高値を超えるまでに(なんと)35年もかかったが、これは特殊なケースだ。同じ期間に世界全体の株式市場や、その代替としてのアメリカ市場は、インターネットバブルの崩壊や世界金融危機、コロナショックなどがありながらも、平均すると年率5〜7%で右肩上がりに上昇している。

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source : 文藝春秋 2024年11月号

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