橘玲のイーロン・マスク論

橘 玲 作家
ビジネス 企業 テクノロジー 読書

ハイテクの寵児は民主主義国家の脅威になろうとしている

 映画『アイアンマン』のモデルにもなったイーロン・マスクは、宇宙ロケット開発のスペースX、電気自動車のテスラ、通信衛星システムのスターリンクなどを創業しただけでなく、2022年10月にSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)のツイッターを買収したことで話題をさらった。

 当代随一の伝記作家ウォルター・アイザックソンによる『イーロン・マスク』(小社刊)では、この稀代の起業家の半生が、私生活の混乱も含め赤裸々に(だが愛情を込めて)描かれている。

 アイザックソンがマスクに密着取材を行なった2年間は、ロシアのウクライナ侵攻(マスクはインターネットを遮断されたウクライナにスターリンクの端末を無償提供した)やツイッター買収と重なっており、会議に同席し私生活の場を共にするだけでなく、電子メールや各種文書の閲覧も許されたことで、この動乱の時期に実際に何が起きていたのかがはじめて明かされた。

 読者は、この不可解な、だが途方もなく魅力的な人物の52年間のジェットコースターのような人生を、映画や劇画のような面白さで体験できるだろう。

イーロン・マスク』書影 ©文藝春秋

 イーロン・マスクは実在の人物だが、一時は個人資産が3000億ドル(約40兆円)を超え、その存在は現実離れしている。事業の目的が「人類を絶滅から救い、火星に移住させる」ことだとすれば、なおさらだ。だが、マスクはたしかに突出しているものの、「唯一無二」というわけではない。スティーヴ・ジョブズやビル・ゲイツをはじめとして、シリコンバレーは多くの起業家を輩出し、この半世紀のあいだ現代社会の姿を大きく変えてきた。しかもその速度は、ますます加速しているのだ。

 そこでここでは、シリコンバレーの「天才」たちを突き動かすものについて書いてみたい。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2023年11月号

genre : ビジネス 企業 テクノロジー 読書