SNSはなぜしばしば狂乱するのか。その理由は、現在では、脳科学によって完璧に説明されている。問題は、ではどうすればいいのかという解がないことだ。
人類は数百万年の進化の大半を、150人程度の小さな共同体のなかで暮らし、ステイタス(社会的地位)をめぐる競争に明け暮れてきた。
すべての生き物は「利己的な遺伝子」のヴィークル(乗り物)で、生存と生殖(後世に残す遺伝子の複製)を最大化するように進化した。ヒトのような社会的な生き物では、地位が高ければ高いほど、多くの子孫をもうけることができる。
このシンプルな前提から、脳は(自分より優れた者との)上方比較を「損失」、(劣った者との)下方比較を「報酬」として感じるようになった。わたしたちは、上方比較の「痛み」を嫌い、下方比較の「快感」を好むように「設計」されている。
人間関係が緊密に入り組んだ共同体では、ちから(暴力)を誇示するだけでは地位を上げることはできない。共同体にとって不都合な人物は、男たちの謀議によってすみやかに排除されただろう。このようにしてヒトは、言語(噂話)によって他者を操作し、ライバルを蹴落とす“陰謀”に習熟するようになった。
ホモ・サピエンスは高い知能を進化させたものの、身体的には脆弱で、集団のなかでしか生きていくことができなかった。共同体を維持するうえでの最大の問題は、フリーライダー(抜け駆け)の存在だ。なんの協力もせず収穫の分け前だけを得ようとする者がいると、信頼が崩壊してしまう。
法律も警察もない人類史の大半で、この問題にどう対処したのか。じつはこれには、ものすごく安価で効果的な方法がある。共同体の構成員すべての脳に、抜け駆けのような不道徳な行為に嫌悪を感じ、罰することで快感を得るプログラムを組み込んでおけばいいのだ。
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source : 文藝春秋 2023年2月号