いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
バブル崩壊後の不況期、新卒の就職市場が非常に厳しかった「就職氷河期」に高校や大学を卒業した世代は、卒業直後だけでなく長期にわたって、上の世代に比べて年収が低く雇用が不安定な状態が続いてきた。
このこと自体は以前から指摘され、就労支援も実施されてきたが、2024年秋の衆議院議員選挙、そして2025年夏の参議院議員選挙でも争点の一つとなり、改めて社会的・政治的な関心が高まっている。この世代が50代に差し掛かり、老後への不安が高まってきたことで、低年金者対策など、社会保障面からの支援の必要性が認識されはじめた。
しかし「不遇な世代」との印象だけが先走り、必ずしも客観的な実態を踏まえての議論がなされているとは限らないようにも思う。そもそも「就職氷河期世代」という言葉から何を想起するかが人によってずれがある。就職氷河期世代の当事者としてメディアに登場するのは、バブル崩壊直後の1990年代半ばに大学を卒業した人が多い印象がある。しかし、卒業時点の就職状況が最も悪かったのはもう少し後の2000年代初めだ。また、ニート(学生でも主婦や主夫でもなく求職活動もしていない無業者)など特に困難な状況にある人の割合は、大卒よりも高卒・専門学校卒のほうが高い。
さらにいえば、一般的には「就職氷河期世代」に含まれない2000年代後半~2010年代前半に卒業した世代も、氷河期世代と同じくらい年収が低く、20~30代時点での非正規雇用比率も高かった。2000年代半ばの「景気回復期」ですら、就職氷河期の前半と同程度まで回復したに過ぎない。バブル崩壊直後の数年間に卒業した特定の世代だけが不遇だったわけではない。

また、当たり前のことだが、不遇な世代だからといって皆が困窮しているわけではない。拙著(『就職氷河期世代』中公新書)では、1993年から2004年の間に高校や短大・高専、大学を卒業した人たちを「就職氷河期世代」と定義し、その数を約2000万人と見積もった(別の試算では1700万人ともいわれる)が、その中にはもちろん、社会的な地位が高く経済的に成功した人たちも大勢含まれる。
結果的に将来の負担軽減に
逆に、他の世代にも困難な状況にある人たちはいる。経済的に自立できず親と同居してどうにか生きてきたが親が高齢となり頼れなくなったら生活が破綻する、というのはしばしばメディアが取りあげる「苦しい氷河期世代」のステレオタイプの一つだが、氷河期世代よりも上の世代で、すでに高齢となった親に頼れなくなり生活が破綻しつつある人たちがいる。2010年代後半以降の若年労働市場は、平均的には人手不足で売り手市場だが、なかなか安定した仕事につけず非正規雇用と失業を繰り返す人は一定数いる。
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