自殺者が激減した3つの理由と次なる難題

ピーク時から14000人減

平野 孝典 社会学者・桃山学院大学准教授
ニュース 社会

いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。

 警察庁の統計によれば日本の自殺者数は、ピークの2003年の34427人から、コロナ禍直前の2019年には20169人へと激減し、わずか16年で約3分の2になった(厚生労働省「令和6年版自殺対策白書」)。

 人口の変化を考慮した「自殺死亡率」(人口10万人当たりの自殺者数)で見ても、27.0人から16.0人へと大幅に低下している。コロナ禍で一時的に微増したが、2024年の自殺者数は20320人(人口10万人当たり16.4)と、低水準を維持している。

 年齢別にみると、40歳以上では、2003年から2019年にかけて自殺死亡率は概ね4割から5割ほど減少した。30歳代は約3割、20歳代は2割弱の減少である。一方、子ども(19歳以下)の自殺は減少せず、むしろ増加傾向が続く。

 子どもの自殺は最後に触れることにし、まずは日本全体での自殺減少の背景を考えよう。まだ定説はないため、筆者がこれまでの研究を整理し、3つの説にまとめたものを紹介する。

画像はイメージです ©amasan/イメージマート

 第一の説は、「景気回復」説である。澤田康幸氏(東京大学)らの分析により、日本の自殺死亡率は、失業率などの経済指標と強く連動する傾向があることがわかっている。端的に言えば「景気が悪化すると自殺が増える」という関係で、特に男性において顕著だ。

 景気が悪化すると自殺が増える背景には、主に2つの理由が考えられる。第一に、倒産やリストラで職を失う人が増えるためだ。失業は自殺の危険を高めるため、この層の増加が社会全体の自殺率を押し上げる。第二に、働いている人も無職の人も、ともに精神的な負担が増すためだ。不況は就業者のストレスを増やし、無職の人からは再就職への希望を奪う。

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source : ノンフィクション出版 2026年の論点

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