2026年版「言ってはいけない」 富のシェア、学歴格差、若者の幸福度……あなたの常識がひっくり返る 

橘 玲 作家
ニュース 社会 政治 経済 国際 マネー ライフスタイル 教育

 わたしたちは世界を正しく理解できているのだろうか。

 日本でも欧米でも経済格差がとめどもなく拡大し、取り残された者たちの怒りがポピュリズムと結びついて社会を動揺させている。――これは現代のあらゆる政治的議論の大前提だが、スウェーデンの経済学者ダニエル・ヴァルデンストロムは、最新の調査文献にもとづいて欧米(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、スウェーデン)の富の分布を詳細に検証し、「すべての国で経済格差が大幅に縮小し、先進国はますます平等になっている」ことを発見した(『資産格差の経済史 持ち家と年金が平等を生んだ』立木勝訳/みすず書房)。

「そんなわけはない」と思ったひとは図表①を見てほしい。これは1900年から2015年までの、欧米主要国の最富裕層10%の富のシェアの推移を示している。

 

 20世紀はじめは、トップ10%の富裕層が全私有財産の80~90%を保有するきわめて不平等な社会だった。ところがここから富裕層の富のシェアは下がりはじめ、とりわけ第二次世界大戦後は、富裕層のシェアが80%超から50%弱まで下がったイギリスを筆頭に、どの国でも「急激な平等化」が起きている。

 世界金融危機を受けて2011年から始まった「ウォール街を占拠せよ」のスローガンは「We are the 99%」で、富は上位1%の超富裕層に集中し、残りの99%は一方的に収奪されていると抗議した。だが図表②を見ると、欧米では1950年以降、下位90%の富が大きく増えてトップ1%を超えている。

 

貧困層の多くが中間層になった

「富の平等化」の理由は、戦争や革命によって富裕層の富が破壊されたからではなく、大衆の富が大きく増えて貧困層の多くが中間層になったからだ。ヴァルデンストロムは、不動産(持ち家)価格の上昇と株式市場(公的年金)の拡大がこの奇跡を実現したとする。

『21世紀の資本』が世界的なベストセラーとなったフランスの経済学者トマ・ピケティは、資本主義社会における経済格差の拡大を「r>g(資本収益率が経済成長率を上回る)」という不等式で説明し、資本をもつ者の富が加速度的に増えて格差がとめどもなく拡大していると論じた。この主張は「ネオリベ」や「グローバリズム」に反対する左派・リベラルに大きな影響を与え、「不服従のフランス」のような左派ポピュリズム政党の理論的な基盤となった。

最富裕層の富のシェアが低下

 だがこれに対してヴァルデンストロムは、富の分布をデータから調べると、「ヨーロッパとりわけフランスとイギリスがこの平等化の傾向をリードしていて、富の極端な集中から、ずっと穏やかなポスト福祉国家的な水準へと移行している」と、まったく逆の結論を導いた。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

初回登録は初月300円・1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

18,000円一括払い・1年更新

1,500円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2026年2月号

genre : ニュース 社会 政治 経済 国際 マネー ライフスタイル 教育