「ゴルフと人生は同じ。一寸先は闇だ。でも、もう一度トライしたくなるじゃない」
何事も夢中になると我を忘れて没頭する小林旭が、ある時期、俳優や歌手活動以上に熱を上げたのがゴルフだった。キャリアは長く、初めてクラブを握ったのは20代の頃。全盛期にはドライバーで300ヤード以上飛ばし、プライベートではジャンボ尾崎(尾崎将司)や青木功とも渡り合った。
「俺がゴルフを始めたのは昭和30年代の頭頃。当時は大企業の社長や銀行の頭取といった社会的地位の高い人が集まってやるスポーツで、いまみたいにハタチそこそこの小僧っ子がチョロチョロやるようなものじゃなかったんだ。芸能界では黒澤明監督やNHKの宮田輝アナウンサー、歌手の小畑実さんたちがやっていたくらいでね。
俺もまだ若造だったけど、いっぺんでゴルフの魅力に取り憑かれたよ。止まっているボールを打つ、つまり無から有を生み出す世界観が性に合っていたのかもしれない。どっぷり浸かって夢中になって、気づいた時には自分でゴルフ場を造るところまで行っちゃったんだ」
諸説はあるがゴルフはスコットランド発祥の紳士のスポーツ。戦後間もない日本においては世間一般に馴染みが薄く、小林にとっても未知のゲームだった。小林にゴルフの存在を教えたのは主演映画『二連銃の鉄』(昭和34年)を手掛けたアメリカ帰りの阿部豊監督だった。
「ゴルフという言葉自体は耳にしたことがあるけど、見たこともなければ、どんなスポーツなのかも知らなかった。撮影所で阿部監督がパターをいじってるのを目にして、それがゴルフの道具だということを初めて知ったくらいだからね。
たまたま撮影所と自宅の間にゴルフ場があって、その話を阿部さんにすると『ちょうどいい。朝、ボールを置いてきてくれ』と。それが世田谷にあった砧のゴルフ場に出入りするきっかけになった。
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source : 文藝春秋 2023年10月号