■秋元康ロングインタビュー
第1回 青春は何キロヘルツ?
第2回 僕が作詞家になった日
第3回 なぜ、美空ひばりさんは「川の流れのように」を選んだか?
第4回 天才は、確かに存在する
第5回 AKB48がどうやって生まれたのか?
第6回 AKB48 売れると思っていたのは……
第7回 AKB48選抜総選挙が歴史になるまで
第8回 あいつばかりがなぜ、モテる? 今回
第9回 もう一度会いたくなる彼女たち
第10回 “相性”について
第11回 TKって、何者?
六本木のグランド ハイアット東京 日本料理「旬房」の個室に呼び出された。
今日の秋元康のインタビューはここでやるらしい。
「カレーうどん、頼んでおいたから」
秋元は、やおら、目薬を差しながら言った。

この場合、「カレーうどんですか?」を先に突っ込んだ方がいいのか、「目は、どうしたんですか?」を先に突っ込んだ方がいいのか?
「俺が知る限り、ここのカレーうどんは、世界で三本の指に入る」

秋元は目をしばしばさせてから言った。日本以外の国に、“カレーうどん”はあるのだろうか?
「目は、どうしたんですか?」
「2、3日前から、目が痛くてさ。涙が止まらなくなっちゃって、日曜日の朝、大学病院の救急外来で診てもらったら、『眼球に傷がついています』って……。スキー場の紫外線とか、工場でアーク溶接をするとかで、なるらしいんだけど……」
「どっちも縁がない生活をしていますよね? 何か、特別なことをしたんですか?」
「それがさ……」
秋元が言いかけたところで、カレーうどんが来た。見た目は、日本蕎麦屋にあるそれと変わらない。
「まずな、“スープ”を飲んでみな。“つゆ”じゃないぞ、これは、“スープ”だ」

言われるままに、れんげで“スープ”を飲んだ。
旨い。日本蕎麦屋にある和だしのカレーうどんとも、もちろん、香辛料をあれこれ使ったスープカレーとも違う。フォンドボーのように濃厚なのだ。
「パソコンで書いた原稿が飛んじゃってさ……」
うどんを啜りながら、秋元が言った。
「iCloud上に保存されてるんじゃないですか?」
確かに、このスープを絡めて啜るうどんは絶品だ。秋元の原稿が消えた話などどうでもよかったが、無視するわけにもいかないので、相槌代わりに聞いてみた。
「ないのよ、それが……。でも、俺は、確かに『保存』をクリックしたんだ」
それから、秋元は、未練がましく、喋り続けた。その原稿を復元するために知り合いのIT会社の社長に頼んで、インド人の技術者まで動員したらしい。
カレーうどんを食べ終わって、僕は聞いた。
「本当は、書いていなかったんじゃないですか?」
「ずっと、締め切りに遅れている俺が、『原稿を書いたんだけど、消えちゃった』なんて、わかりやすい嘘を言うと思う?」
「そりゃ、そうですね」
「昔、書いた『着信アリ』っていう小説も250枚書いたところで、消えちゃったから、それ以来、気をつけていたんだけどなあ。今回は、まだ配信前のNetflixの連ドラのプロットを書いていて、5話目までは、慎重にうちのスタッフに送って保存させていたんだけど、残り3話で油断した。3日間徹夜して書き続けていたから、スタッフに送らなかったんだよね。当然、俺のパソコンに自動的に保存されていると思うから……いや、『保存』と、クリックしたよ。でも、それを開いたら、消えていた。悲劇だろ?」
「で、結局、どうしたんですか?」
「また、3日間徹夜して、書いたよ、しようがないから……」
「それで、目を酷使し過ぎて、眼球に傷がついたってことですか?」
「そうそう……何時間もパソコンを凝視してたから、ドライ・アイになったんだろうな……」
「でも、月刊『文藝春秋』の読者は、パソコンから原稿が消えた話も、眼球に傷がついた話も全く興味がないと思いますよ」
「いいんだよ、それで……。月刊『文藝春秋』に秋元が書いていた原稿が消えたという話が載れば、Netflixのプロデューサーも『本当だったんだ』と思ってくれるだろう?」
「実際はどうなんです?」
小さな声で聞いた。
「STAP原稿はあります」
秋元はネタの古いギャグを自信満々に言った。(※編集部注 2014年にネット流行語大賞の金賞を受賞した「STAP細胞はありまぁす」のこと)
藤井フミヤ最強説
――色々な芸能人を見てきたと思うんですけど、人気スターになるには、人を引き寄せる強烈な何かが必要ですよね。たとえば、一番、モテるなと思った芸能人は誰ですか?
秋元 芸能人は、“モテる”ことが仕事みたいなものだから、みんな、モテるよね。う〜ん、男性だったら、藤井フミヤかな。

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