中目黒駅からタクシーに乗り、山手通りの先で野沢通りへ左折すると、目黒ゴルフ練習場の近くに、今回、インタビュー場所に指定された店「ふじ」があった。季節料理の暖簾が掛かったごく普通の居酒屋である。建て付けの悪いサッシの扉を開けると、すぐ目の前のカウンターに秋元康が座っていた。「すみません。僕の方が遅くなっちゃって……」と、詫びながら、隣に座ると、「いやいや、待ち合わせの時間まで、まだ5分ありますよ。ただ、僕がここのお母さんと話したくて、少し早く来ただけです」と、カウンターの中の女将らしき女性と目を合わせて微笑んだ。
他に客はいない。秋元が貸し切ったのだろうか?
「何、飲みます? ビール?」
「いや、僕は、アルコールは……。インタビューしなきゃいけませんし……。秋元さんは?」
「僕も普段は飲まないんだけど、今日は飲みながらやりましょう。ここね、普通は手に入らない幻の日本酒が置いてあるんですよ、ね?」
狭い店内の端に置かれた冷蔵ショーケースの中の、高そうな日本酒の木箱を秋元が指差した。
「じゃあ、僕も日本酒をいただきます」
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source : 文藝春秋 2023年10月号