僕が作詞家になった日

秋元康 ロングインタビュー 第2回

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 前回と同じホテルの同じ部屋で、“秋元康”と対峙していた。多忙なスケジュールの中、約束通り、2度目のインタビューの時間を作ってくれたのはありがたいのだが、目の前にいる小太りの男(いや、テレビで見るよりは痩せているのだが、首が短く胴体に埋まっているように見えるからそう見えるのだろう)の正体が、どうも掴めない。1回目のインタビューでは、肝心なところをはぐらかされているような気がしたのだ。「もっと、秋元康の本性を引き出さないと……」と自分がどこか気負っているのがわかる。

「コーヒーでしたよね?」

 秋元康は、手慣れた感じで内線電話からルームサービスをオーダーしながら、僕に話しかける。

「週刊誌の記者って、芸能人がどのホテルのどの部屋に誰と泊まったとか、どうやって情報をキャッチするんですか? やっぱり、ホテルの従業員のリークなんですか? だって、ターゲットをずっと、尾行し続けるのは大変でしょう? あっ、そうか、宿泊客がリークする場合もありますね?」

 電話の送話口を手で押さえながら、1人で勝手に喋っている。

「どうですかね。そういうスクープ班はいくつもあって、それぞれが動いているらしいですし、うちは、月刊『文藝春秋』なので……。総局長になった新谷に聞いてみたら、どうですか?」

「新谷さんも酷いよなあ。文藝春秋電子版で『秋元康さんと歴史的和解!?』なんてタイトル、打ったでしょう? 僕が“前田敦子のお姫様抱っこ”のスクープで激怒したとか……(笑)。そんなことで怒りませんよ。それより、昔、映画監督の福田雄一とNGT48の中井りかとでご飯を食べに行った時、3人で撮った記念写真で、たまたま僕がしていた腕時計を記事にされた時は頭にきましたね。ファンたちから、『俺たちが貢いだ金で買った』とか言われて……。印税収入っていうのは、みんなが想像しているより、ずっと、少ないですよ。でも、福田雄一がSNSにアップした写真から強引にネタを作るなんてのは、酷くないですか? 山口百恵さんが引退した頃、ある女性誌が近所の八百屋で買い物をしているスクープ写真に『山口百恵、大根を買う』というタイトルをつけたことを思い出しました。『秋元康、印税で腕時計を買う』というのも面白いなと思って、最終的には笑ってしまいました」

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source : 文藝春秋 2023年9月号

genre : エンタメ 芸能 テレビ・ラジオ 音楽