昭和の頃、一般人は何かを外に向かって発信したり、表現したりするのは難しかった。一般人にはそういう場がなかったのだ。
昭和も末期になると変わって来たとはいえ、外の不特定多数に向けての発信や表現は、プロであればこそ許されていたように思う。
歌も楽器もスポーツも、また随筆など何かを書くことも、持論を述べたりすることもだ。
おそらく、誰もこれに疑問を持たなかったのではないか。だが、色んな人に知らせたいなァと思うこともあったはずだ。日常生活の中の面白いこと、旅先でのできごと、時事問題への私見、他人の意見を聞きたいこと等々である。手紙や電話という手段はあったが、相手は友人知人や身近かな人に限られる。
しかし、今はできる。
SNSである。
不特定多数にも、また限定した人たちにだけでも、一度に簡単に発信できる。それも写真でも絵でも動画でも何でも送れる。日記のように毎日更新できる。
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source : 文藝春秋 2024年8月号