大阪・関西万博はレガシーを残せるか

「空飛ぶクルマ」は断念

松本 創 ライター
ニュース 社会 政治

 会場建設費や運営費の膨張、海外パビリオンの建設遅れ、企業の買い取り分以外は売れない前売り券など、2025年4月の開幕前から迷走している大阪・関西万博。仮に、10月まで半年間の会期を大過なく終えたとしても、閉幕後まで問われ続ける課題がある。

 この万博のレガシー(遺産)は何か、ということだ。「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げ、多大な税金を投入した国家イベントは実際のところ、未来に何を残すことができるのか――。

 万博誘致を主導した大阪維新の会の現代表で、日本国際博覧会協会(万博協会)副会長でもある吉村洋文・大阪府知事は、万博を機に生まれる新技術や産業がレガシーであり、その代表例が会場の内外を結んで乗客を運ぶ「空飛ぶクルマ」だと繰り返し語ってきた。

画像はイメージです ©hiroyuki_nakai/イメージマート

「大阪のベイエリアを普通の人が自転車に乗るみたいに空飛ぶクルマに乗ってグルグル回ってるのを万博でやります」(23年8月)、「空飛ぶクルマ(の開発)は、万博がなければ日本でこんなスピード感で進んでこなかった。離島への移動や災害救助への活用など『移動革命』を促せる」(同12月)

 だが、大言壮語に反して、24年9月には運航事業者に選ばれている4社・グループのすべてが万博での商用運航を断念し、乗客を乗せないデモフライトにとどまることが正式に決まった。

 もう一つ、吉村知事がレガシーとして期待をかけるのが会場のシンボル「大屋根リング」だ。1周2km、幅30m、高さ12~20m。使用木材が約2万7000立方mに上る「世界最大級の木造建築物」とされる一方、344億円という巨額の建設費が批判の的になった。これに対しても、吉村知事は強気に語ってきた。

「本当に圧倒的な唯一無二の木造建築物。全部なのか一部なのか、残し方も含めて検討していくべきだ」「無駄遣いだと批判されるが、将来どちらが正しかったか、ぜひ答え合わせをしてもらいたい」(いずれも23年12月)

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source : ノンフィクション出版 2025年の論点

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