瀬戸内海に面する広島県三原市。その市街地の沖合に、小佐木島(こさぎじま)という小さな島が浮かんでいる。野生のタヌキやイノシシが暮らす、のどかな島だ。かつてはミカンの栽培と造船で賑わい、100人以上が暮らしていたこともある。しかし、いまこの島に住んでいる人はたったの5人だけだ。そのうち4人が90代。つまり、このまま何もしなければそう遠くない将来に無人島になってしまう。この島が特別なわけではなく、日本中どこにでもあるような限界集落のひとつだ。

そんな限界集落の小さな島で、2024年5月の週末にひとつのイベントが行われた。広島市内在住の数組の家族が小佐木島を訪れ、島を散策したり生い茂る竹の伐採体験をしたり。島内の宿泊施設に1泊し、夜はバーベキュー。足を運んだ元島民との交流も楽しんだ。
このイベントは、三原市のDMO(観光地域づくり法人)の「そら・みち・みなと」と、JR西日本のグループ会社でマンション事業を手がけるJR西日本プロパティーズによって実施されたものだ。おおざっぱに捉えれば、三原市とJR西日本が仕掛けたといっていい。
三原市の担当者は、このイベントの狙いについて次のように話す。
「こうしたイベントを入口に島のことを知ってもらい応援してくれる人をひとりでも増やすこと。そうすることで、小佐木島を盛り上げていく道が見えてくる。これまで長いこと歴史と文化を育んできた島ですから、このまま消えるに任せるのではなく、残すことに価値があると考えています」(三原市の担当者)
つまり、目的は「関係人口の創出」にあるということだ。
関係人口とは、観光客のような交流人口と定住人口の中間に位置し、移住するほどでなくても、地域とより深く、多様な関わり方をする人たちのことだ。住民の親族や元住民、頻繁に行き来しているような地域外の人も含まれる。関わり方は人それぞれだが、多様な人材が地域に深くコミットすることで、人口減少や高齢化が進む地域社会の新しい担い手になり得る。いきなり定住人口を増やすことは難しくても、関係人口の増加を通じて地域の活力を保とうというわけだ。
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