残念ながら、日本の人口減少は止まらない。政府や国会は「少子化対策の強化だ」と周回遅れの議論を重ねているが、いまさら不妊治療の拡充や出産育児一時金の増額などを講じても焼け石に水だ。少子化対策を不必要だとは言わないが、出生数の減少ペースを多少緩められるぐらいの効果しか期待できない。
過去の少子化の影響で、子供を産める年齢の女性の数が今後驚異的な減り方をするためである。
出産可能な女性はどれぐらい減るのか。2021年に誕生した子供の母親の85.8%は25〜39歳だ。総務省の人口推計(同年10月1日現在)によれば、この年齢の日本人女性は943万6000人である。一方、25年後にこの年齢に達する「0〜14歳」は710万5000人で24.7%少ない。ここまで減ると、合計特殊出生率(一人の女性が生涯に出産する子供数の推計値)が多少改善しても、全体の出生数は減り続ける。この「不都合な現実」から目を背けてはならない。
22年の日本人の年間出生数は80万人を割り込む見通しである。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は70万人台突入を30年と推計していたので大幅な前倒しとなる。婚姻件数も落ち込んだままなので、23年以降も出生数の急落は続きそうである。日本の総人口が1億人を下回る時期について社人研は53年と推計しているが、こちらもかなり早まることが予想される。
新型コロナウイルス感染症をめぐり、政府や地方自治体が「高齢者などの命を守らなければならない」と行動自粛要請を繰り返したことで、多くの若者の収入が減り、出会いの機会は減少した。やむを得なかった部分があるとはいえ、日本が失ったものはあまりに大きい。
人口減少の弊害はあらゆる分野に及ぶ。国内マーケットの縮小は内需依存の企業を苦境に追い込み、働き手の不足は社会を停滞させる。
年間出生数を基に20年後の20歳人口を計算すると、およそ3割減る。これでは大企業にも十分な人材を獲得できないところが出てくるだろう。自衛官や警察官などの不足は、安全神話の崩壊を意味する。
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source : 文藝春秋 2023年2月号