2020年の文部科学省による「学習指導要領」の改訂を機に、小学校・中学校・高校での「金融教育」の拡充が進められてきました。金融広報中央委員会によると「金融教育は、お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会の在り方について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に判断し行動できる態度を養う教育」だそうです。
ところが、世間一般では、金融教育の「資産運用」の部分だけがクローズアップされすぎているように思えます。
先日も、ある新聞記事で都内の高校における証券会社の出張授業の話を読んで驚きました。「日本の未来を明るくする方法」と授業のタイトルは立派なのですが、中身はドルでの資産運用を教えているだけ。これでは、証券会社が将来金融商品を買ってくれるお客さんを育てているだけです。
みんなでお金を貯めても意味がない
近年は少子高齢化が進み、将来もらえる年金が少なくなるのではないかと、多くの人が不安を感じるようになりました。「老後2000万円問題」も記憶に新しいですが、その解決方法として、2024年1月から始まった「新NISA」も注目されています。世の中の流れを見ていると、多くの人が「どうやってお金を増やせばいいか」を考えているようです。

ただし、お金の「増やし方」を考えることは個人の問題解決になっても、全体の問題解決にはつながりません。
以前、「金利が上がって運用益が増えれば、年金問題は解決する」と主張する経済評論家の話を聞いたことがあります。しかし、その金利は空中から生み出されるのではなく、ローンを組んでいる事業者や、国債を発行している国が支払うことになります。結局は未来の誰かが支払っているだけで、全体のお金が増えるわけではありません。
そもそもお金とは、「分配」のための道具です。社会全体で、どう労働を分配するか、生産された物やサービスをどう分配するか、それを決めるための道具でしかない。例えば、無人島にお金を持って行っても意味がありませんよね。お金が、物やサービスに変わるわけではありませんから。
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