三宅唱「映画もサッカーも監督の仕事は似ている」

日本の顔 インタビュー

三宅 唱 映画監督
ライフ 映画 ライフスタイル

頭を抱えながら直感に従う

※三宅唱さんが登場したグラビア「日本の顔」もぜひご覧ください

■日本の顔

2024年

5月号 松本幸四郎(歌舞伎役者) インタビューグラビア

6月号 辻惟雄(美術史家) インタビューグラビア

7月号 野沢雅子(声優) インタビューグラビア

8月号 山本理顕(建築家) インタビューグラビア

9月号 吉高由里子(女優) インタビューグラビア

2026年

1月号 藤田晋(サイバーエージェント会長) インタビューグラビア

2月号 永山祐子(建築家) インタビューグラビア
3月号 三宅唱(映画監督) インタビューグラビア 今回
4月号 新垣幸子(染織作家) インタビューグラビア
5月号 片岡真実(森美術館館長・キュレーター) インタビューグラビア

 映画作りは楽しくてかっこいいもの、という思いが自分のベースにあると思います。よく「優しい映画を作るんですね」と言われます。2024年の『夜明けのすべて』は特にそうでした。PMS(月経前症候群)に悩む女性とパニック障害を持つ男性の交流を見つめた映画なので、そのように思われるのかもしれない。でも、「優しい映画」を作ろうと思ったことはありません。理不尽な世界でどう楽しく生きるか悩んで、トライする人に惹かれるんです。

 映画作りは人生を懸けるに値します。単にいい映画を作るだけでなく、関わる人たちと一緒に真剣に楽しめる過程も、僕にとっては大事です。撮影現場で働く四、五十人が「映画の仕事をしてよかった」と感じられる現場を作る責任もあります。仕上がりにも関わってくるし、みんな人生は一回しかないんだから。

 これは観客にとってもそうです。わざわざ映画館に行って、出た後に、どんな変化が起きるか。もちろん、たかが映画だから、世界で起きている喫緊の問題を直接解決できるわけではない。でも、毎日真剣に生きている人が、映画館で普段なかなか目にしないものに驚いたり、戸惑ったり、いつもと違う角度から考えたりしながら、思いこみから解放されて、少しでも自由な気分になれたら、面白い体験になるはず。

三宅唱氏 Ⓒ文藝春秋

 最新作の『旅と日々』はそういう映画になってほしいと思っていました。おかげさまで、ロカルノ国際映画祭でグランプリの金豹賞を獲得しました。海外の映画祭での大きい賞は初めてのことで、今春には自分たちの作品として初めてアメリカで公開されます。各部署のスタッフと継続してきた仕事が結実した手応えもありましたし、スペシャルなチームだと心から思います。

ロカルノ映画祭にて、トロフィーをかかげる ⒸABACA PRESS/時事通信フォト

『旅と日々』は漫画家のつげ義春さんの「海辺の叙景」と「ほんやら洞のべんさん」という二つの短編を原作とした作品です。大学生の時に読んで以来惹かれていた漫画なので、プロデューサーに原作として提案された時は心躍りました。でも、どう映画にすればいいのか、すごく難しかった。それが、日韓で活躍する俳優のシム・ウンギョンさんに主演をお願いすることを思いついて、一気に像を結んだ。2022年の釜山国際映画祭で彼女に会って以来、その時の印象が頭の片隅にずっと残っていました。主人公とウンギョンさんとの間に何か共通するものがあると直感的に思いました。格好良くて面白い、実直で素敵な人です。

中学3年生で初めての撮影

 今では映画監督として日々映画を中心に生活が回っていますが、初めて映画を撮ったのは中学3年生でした。追う生徒と追われる生徒がいて、学校の中を走り回るだけの、3分の短編です。

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source : 文藝春秋 2026年3月号

genre : ライフ 映画 ライフスタイル