「内閣の体力があるうちに道筋を……」安倍は私に語った
「一体どういうことだ! 宮内庁側から事前の連絡はなかったのに」
電話口の向こうで、安倍は驚きの声を上げた。2016年7月13日、午後7時5分前。NHKが一本の速報を打った。
「天皇陛下『生前退位』の意向示される」
「ニュース7」で社会部がスクープの詳細を解説すると、衝撃は瞬く間に広まった。天皇(現上皇)は82歳の高齢となり、今後、日本国憲法で定められた象徴としての務めを十全に果しえなくなるのではないかとのご懸念を抱かれていた。そのため、数年以内に皇太子への譲位を望まれている――想像していなかった事態に、官邸記者クラブにいた私も呆気に取られた。
驚き冷めやらぬ様子だった安倍も、すぐさま生前退位を行う上での問題点を悟り、その晩の電話でこう語っている。
「現行の憲法上、陛下のご意向だけでは退位は認められないはずだ。それを可能にすれば、政府の思惑で強制的に天皇を交代させる余地を生んでしまう。摂政の制度は法律上認められているが、天皇陛下は摂政の設置を望まれていないはずだ。皇室典範を改正して恒久法として生前退位を認めるのか、それとも一代限りの特例法とするのかも議論が分かれるところだろう。これは国体に関わる重大事だ。とても簡単にクリアできる案件ではないが、何とか政府の責任で成し遂げなければならない」
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source : 文藝春秋 2022年12月号