「文藝春秋」の編集者が明かす、電子版限定の“ここだけの話”
「文藝春秋」2026年2月号に「ピーター・ティールのワンピース論 前編」を掲載したが、きっかけは、仏の歴史人口学者・家族人類学者のエマニュエル・トッド氏だった。
2人の関係は意外に思われるかもしれないが、トッド氏は著作でティール氏に度々言及している。

本誌2025年7月号では〈ピーター・ティールが、「アポカリプス(黙示録、終末論)」について語っています。彼はシリコンバレーの億万長者でトランプ支持者ですが、パリのジョルジュ・サンク・ホテルで3時間ほど話したことがあります〉と、『西洋の敗北』では〈ピーター・ティール(ペイパル共同創業者)にお礼を申し上げたい。アメリカのエリートたちに関する刺激的な実りある彼との議論によって、真の金持ちの視点を理解できたからだ〉と述べていて、米国のエリート層の内情を知る上で、ティール氏を大いに頼りにしているようだ。
昨年10月中旬から下旬にかけて来日していたトッド氏から、フランスへの帰国直後に、「日本で出版する可能性を探っているようで、これを読んで感想を聞かせてもらえないか」と、送られてきたのが、宗教系誌First Thingsに2025年10月1日付で発表されたピーター・ティール氏の原稿だった(原題 Peter Thiel & Sam Wolfe, Voyages to the End of the World「世界の終わりへの航海」)。
私の英語力と神学的知識では、細部まで正確に理解することは叶わなかったが、「キリストと反キリスト」、あるいは「信仰とテクノロジー」の対立というテーマの壮大さに大いに魅了され、トッド氏の言っていた「ティール氏のアポカリプス(黙示録)論」であることは即座に分かった。しかも末尾で、世界的な人気を誇る『ONE PIECE(ワンピース)』が論じられていることに大いに興味をそそられた。
しかし、博覧強記のティール氏が神学的教養を“全開”にして聖書や古典を惜しみなく引用している原稿で、「語学力」だけでは「リーダブルな日本語」にはとても訳せそうにない。訳者選びが難題として残った。
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