現地で再確認した「西洋の病い」
『西洋の敗北』(英語以外の25カ国語に翻訳)の刊行がきっかけで招待を受けて、4月上旬にハンガリー、4月下旬にロシアを相次いで訪問しました。いずれも短期間の滞在でしたが、それでも世界をいつもと違う“視点”から眺めることで、「西洋がいかに病んでいるか」を改めて実感する機会となりました。
ハンガリーは、私にとってよく知る親しみのある国です。
訪問の1週間前、パリのハンガリー研究所で講演をしたところ、ある同世代の女性に出くわしました。彼女は「自分が誰か」、私が気づかないだろうと思っていたようです。私は「ジュジャ」と彼女を名前で呼びました。1975年、24歳の時、好きになってハンガリーのブダペストまで追いかけた女性だったんです! 50年ぶりの再会でした。
彼女にはフラれましたが、彼女は同世代のハンガリーの学生たちを紹介してくれました。彼らとの議論から「共産主義」の思想はすでに死滅していることを知り、これが翌年、ソ連崩壊を予言した私のデビュー作『最後の転落』を刊行する大きなきっかけとなったのです。

私はその日の夕食会への参加を彼女に強要しました。アウグスティヌスやトマス・アクィナスなどの神学の専門家が多くいる前で、「彼女はなぜ私の申し出を断ったのか」を議論したのです(笑)。仏語を流暢に話す彼女と楽しい時間を過ごし、まもなく帰国するという彼女とブダペストでの再会を約束しました。
オルバン首相との会談
ブダペストでの講演の前日、先方の希望で、ハンガリーのオルバン首相と面会しました。彼と彼の側近が私の『西洋の敗北』を熟読していて、演説でも大いに活用していたのです。
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