トランプ・ゼレンスキー会談の歴史的な決裂。日米安保はどうなるのか
2月28日、我々は前代未聞の“ショー”――ひとつの文明のルールが崩壊する場に立ち会いました。米ホワイトハウスでのトランプ大統領&ヴァンス副大統領とゼレンスキー大統領との首脳会談の決裂です。これは、米国の新たな“野蛮さ”が露呈した歴史的瞬間で、破廉恥にも全世界に生中継され、欧州にとってはまさに“文明の衝突”と言える事件でした。
これを皮切りに、トランプ政権は「欧州嫌い」の態度を公然ととり続けています。
ミュンヘン安全保障会議で、「欧州の脅威は中露ではなく、欧州の内部にある(移民の無制限受け入れやSNSの過剰な規制など)」と欧州の指導者たちを面罵し、AfD(ドイツのための選択肢)の党首と面会するも独首相ショルツとは会わなかったヴァンス。同じく「AfDだけがドイツを救える」と露骨に他国の選挙に介入し、「スターマー(英首相)は辞任しなければならない」と、自身が所有するXに投稿したイーロン・マスク。欧州のなかでも米国と特別な関係にあるはずの英国の首相との会談でさえ、冒頭から「英国だけでロシアと戦えるか?」と軽口をたたいて侮辱するトランプ。
トランプ政権の首脳陣が揃って、「欧州への憎悪と軽蔑」を露わにしているのです。

これは何を意味するのか。ウクライナ戦争での「西洋の敗北」が明らかになるなかで、「西洋」が分裂し始めたのです。トランプ・ゼレンスキー会談では、大きな子(ロシア)にやられた子(米国)がより小さな子(ウクライナ)をいじめるような醜悪な光景を見せつけられました。共にロシアと対峙してきた米国、欧州、ウクライナの三者は、「敗北の責任」を互いになすりつけ合っています。
「米国=仲裁者」という茶番劇
もともとウクライナは、自力ではロシアと戦えませんでした。2022年2月の戦争開始以降、さらに遡れば、2014年の西側の支援を受けたマイダン革命――プーチンに言わせれば、合法的に選ばれた大統領が暴力的に追放されたクーデター――以降、ウクライナ軍は、長年にわたる米英の支援によって、ロシアが脅威に感じるほど増強されてきたのです(プーチンが「特別軍事作戦」を決断したのは、これに対応するためでした)。
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