「トランプ2.0」を占うために
今、目の前にあるトランプ2.0を私たちはどのように解釈すべきなのか?
一つ確かなのは、それがグローバリズムの必然的結果だということである。
自由となった資本は新興国への投資を加速させ、現地のナショナリズム(覇権主義)を勃興させた。が、その一方で、先進国内においては、一部の富裕層とそれ以外の中間層との格差を広げることになった。そして今回、その新興国(ロシア・中国)への対応と、中間層の復活(平等の回復)を期待されて、トランプが再登場してきたというわけである。
そう考えると、『アメリカのデモクラシー』の著者トクヴィルの「可能性の中心」を論じた宇野重規『トクヴィル 平等と不平等の理論家』は、今こそ読まれるべき本だと言わなければなるまい。

私見では、宇野氏が論じるトクヴィルの「可能性」は二つある。一つは、平等を前提とした近代デモクラシーのダイナミズムと、その脆弱性の議論であり、もう一つは、いかにして、その脆弱性を乗り越えるのかといった議論である。
最初から「諸条件の平等」を前提として建国されたアメリカは、全ての支配関係から解放された〈民主的人間=個人〉を基礎的価値として発展してきた。それゆえにアメリカ人は、古い社会的紐帯を疑い、その支配関係に異議申し立てをし、更には、それを変化のダイナミズムへと接続する自由を持ったのである。
が、全ての支配関係を虚構として批判する〈民主的人間〉は、次第に他者と繋がる枠組みを見失い、孤独と不安に陥り、挙句、自分と同等な多数者の意見に無自覚に従ってしまうことにもなる。これがデモクラシーにおける「多数者の専制」であり、その脆弱性だった。
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source : 文藝春秋 2025年5月号