日本の女子プロボウラー第1号で、優勝回数43回(歴代2位)とボウリングブームの先導役を果たした須田開代子(すだかよこ)(1938―1995)。好敵手だった同期の中山律子(なかやまりつこ)さん(1942―)が思い出を語る。
須田さんは弱いところを他人に見せる人ではなく、どちらかといえば男っぽいというか太っ腹な性格でした。しかし、女性としては非常に繊細で、魅力的な面を見せることがありました。どちらも須田さんの実像でした。

たとえば男っぽいところというと、大勢の人の前でもプロボウラーの代表として大会の挨拶などでは筋道を立てて非常に堂々としゃべるし、全くものおじしない。また話の内容も聞いていて実に骨のあるしっかりとした内容なんです。
亡くなられた年の7月、大磯のボウリング場のオープニングセレモニーで始球式に参加した時のことです。須田さんは食道がんの手術のせいで食欲もなく、55キロあった体重が10キロも落ち、ユニホームから出ている腕と脚が細くなっていて、見るのがつらいほどでした。それでもセレモニーの前、わずか1球の始球式のために、別のボウリング場で軽いボールを使い練習して来られたというんです。
ちょうど私も肺を悪くして検査通院していたので須田さん同様、ボールを投げていなかった。私は特に練習もしないで「1球ぐらいなら大丈夫だろう」と安易にタカをくくっているところがありました。結果は須田さんはラインを外れることなくボールは真っすぐ走り、私はガーターでした。
同じ年の8月にもこんなことがありました。須田さんが病院からお帰りになった時を見計らって私の方から須田さんのご自宅に電話を入れたことがありました。その時に私の方から「須田さんはもう体が悪いのだから、これからは大会でも顔を見せるだけでいいじゃない」と言ったんです。でも須田さんは「いや、私はプロである以上、いつもボールを投げていないとダメなの」と言われたんです。プロとしての意識には頭が下がる思いで、私は本当にすごい人だとショックを受けました。
その反面、非常に女性らしいところがあった。それはおしゃれにすごく気を使う点です。
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source : 文藝春秋 1998年12月号

